幻想のトンネル効果

作品集: 最新 投稿日時: 2014/06/07 23:11:10 更新日時: 2014/06/07 23:11:10 評価: 3/3 POINT: 19 Rate: 2.20
私は自分の能力に不安を感じている。
結界の境界を見る事ができるという能力、実はただの妄想なんじゃないか、と。


今まではその可能性について考えることが無かったんだけど、とある夢を見た事がきっかけで頭の中から離れなくなった。
幻想的な能力を測る基準はない。
それが故に、一度生じた不安は中々私から離れない。
科学で証明できない能力というのはこういう時に明確に分からないから非常に困る。
私の相方が持つ能力のように分かりやすい物なら不安になる事もないんだろうけどね。


では、どんな夢を見てしまったのかについて振り返ってみようと思う。
それは先程まで見ていた夢。
結果から言えば、幻想郷に関わる夢ではあった。
ただし、その内容がいつもと違った。
私がいつも見る夢は幻想郷に入った後から始まっていたのだけど、
今回の夢は幻想郷に入る前――境界を見つける前から始まった。


私が通っている大学の近くにある山。
広大な草原を私は彷徨い、その崖に洞穴を見つける。
なぜか私はそれに無性な期待感を沸き立たせ、鞄から懐中電灯を取り出して入る。
懐中電灯で暗闇を照らし、蝙蝠が羽ばたく音を聞きながら洞穴の奥に向かって進む。
しばらく歩いた末に私の目の前に現れたのは、一枚の奇妙な壁。


その壁は鮮やかな虹色の模様をしており、色の境界は曖昧だった。
まるで空の虹がそのまま貼り付けられたような印象を覚える。
それにしても、こんなに鮮やかで且つ虹のような模様を持つ壁なんて、はたして自然界に存在したかな。
そんな疑念を抱きつつ、私は壁に手を着ける。


すると手は壁を貫通し、すうっと壁の奥へ消えた。
痛覚は全くなく、まるでこの壁が虚ろの像であるみたい。
もしかすると、先程の虹模様は私の"能力"が見せたのでは?
私の能力では境界が見える。
この壁の虹模様は壁自体の模様ではなく、結界があるからそう見えるのかも知れない。


もう片方の手も壁に着ける。
この先には幻想郷があるはず。
今回の夢は、私にどのような幻想郷を見せてくれるのだろう。
そんな思いを知ってか知らずか、壁はもう片方の手も飲み込んでいき――


視界は一変した。
目の前にあるのは壁ではなく、天井。
ここは私の部屋で、どうやら起きてしまったらしい。
私の身体を覆う布団を横に除け、上半身を起こす。
私は夢の世界から追い出されてしまった。
なぜだろう。いつもなら幻想郷に入り、妖怪に追われるはず。
なのに、今回は幻想郷に入る前に夢が終わってしまった。
従来の夢と一つ違う事があるとすれば、結界がある場所が外界の具体的な場所だと分かること。
もしかすると、外界から幻想郷に入るという現象が現実離れしていたせいだろうか。
いや、むしろ幻想郷自体が存在しない……?
現に私は夢以外の世界で幻想郷に入ったことは無い。
しかし、それなら私が今までに見てきた結界は一体何だったのだろう……。


私は訳も分からず頭を振り乱す。
嫌だ。幻想郷が実際にはないだなんて。
私が今まで結界を見る事ができると思っていた能力。これが妄想の産物だったなんて。
信じたくない。それに、そうだとすると私の親友にも申し訳がつかない。
だって、私の親友はれっきとした能力を持っているのだから。
その親友は能力持ちなのに私はただの女子大生。
釣り合いなんて、取れる訳がない。


そして時間は現在に戻る。
「はぁっ……はぁ……っ……」
私は頭を振り乱すのを止め、呼吸を整えて心を落ち着かせる。
夢の中で見た不思議な洞穴。実際にそこに行って確かめるしかない。
私の能力は、確かに幻想郷の結界を見る事ができる能力なんだ。
それを確かめ、安心すればいい。それで悩みは消える。
早速、親友に話を持ち掛けてみよう。













『幻想のトンネル効果』












「……で、その山奥に行こうという訳ね」
講義を受けた後、私はサークルの部屋に行き、私の親友――蓮子に話を持ち掛けた。
蓮子は頭脳明晰で、特に物理学に強い。幼い頃に夜空を見上げたのがきっかけで科学に興味を持ち、現在に至ったと昔彼女が話してくれた。
そんな彼女の能力は、星空を見て時間が把握できて、月を見て場所が把握できる能力。
なんて素晴らしい能力なんだろう。そんな能力もし私にあったら、同じく科学に興味を持っていたと思う。
だって、星空が時間や場所と関連付けされるのでしょう? そんな想像の幅が広がる能力があったら興味を持たない方がおかしい。
……つい舞い上がってしまった。話を元に戻そう。
彼女は茶色い髪をしており、後ろ髪は肩まで伸びるかどうかと言った長さで整えている。
いつも白いシャツと黒い帽子を身に着けており、女らしさが目立つ要素がロングスカートしかない。
たまに私の服を貸そうとするが、いつも
「メリーに悪いから」
と言われて断られてしまう。
もったいないなあ。女の子らしい服を着たら絶対に化けると思うのに。
「とてもいい提案なんだけど、今の時期じゃ少し難しいね……」
蓮子は俯き、視線を落とす。
夏が過ぎ去り、あらゆる物が秋への準備を進める。
草木も人間も衣替えを進め、夏の面影が少しずつ消えていく。
月見や運動会等催し事が目白押しで、私達大学生もその例外ではない。
それは学園祭。各部やサークルが出し物を行い、周囲の人間と交流する、大きな催し事。
特に京都は文化の都、大昔からいくつかの大学が共同で大規模な学園祭を行っており、それは今年も例外ではない。
あまりにも大きな規模に、一応サークルで活動している私達も見過ごせない。
「うん……でも、いいよ。週末にその山奥へ行こう」
少し間を置いてから、蓮子は私の誘いに乗った。
「……いいの? 大学祭が近くにあるし、それに夢の中で見ただけなのよ?」
私は自分の能力を信用できなくなっていた。蓮子に慎重に問い直してしまう。
「何を今更、私はメリーの夢……いや、能力を信用しているよ。まあ、私に見せてくれる世界は私にとっては幻像にしか見えはしないけどね……」
私はもう一つ、不思議な能力を持っている。蓮子に私が見ている物を共有させることができるという、とても不思議な能力だ。
これを能力がある事の証明に使えばいい、そうは言われそうだが、もしかしたらこれも蓮子が見た幻覚かも知れない。
私自身で幻想郷の存在を掴まなければ信用はできない。私の疑心はもうその段階まで来ていた。
「でも、メリーの能力を信用しないと、私達の部活動は成り立たないでしょ?」
蓮子は帽子のつばに手をかけ、深く被りなおした。
「それに、もし大きな発見があれば出し物にできるから、決して今行動するのは悪くないと思う。
 メリーもそう思うよね?」
私は黙って頷いた。
明晰な頭脳を持ち合わせていながら、私が話す根拠が無い話を信用してくれる。
そんな彼女の性格がとてもありがたかった。


週末――
雲一つ無い晴天の下、私達は夢で見た山奥へ赴いた。
幸いにも私が夢で見た山は近所にあった。
なぜ分かったのかといえば、その理由は過去に蓮子に誘われて登った山と同じ景色だったからだ。
あれは大学に入って間もない頃だった。図書館で本を読んでいる時に偶然声をかけられて、偶々その時読んでいた本の話題で盛り上がった。
本の題名は確か、遠野物語だったはず。
様々な妖怪や怪奇現象について書かれていて、私はその情景を、そして蓮子は現象が起こる理由を話題にした覚えがある。
そうして意気投合した私達は、折角だからという事で大学の近くにある山に登る事にした。
その時に見た草原はとても広大で、春の雰囲気がする鮮やかな緑色をしていた。
その草原の崖に、私はあの洞穴を見た。
楽しかった思い出の場所に苦悩の種を振り撒くなんて、夢はなんて残酷なのだろう。
そして私達は草原に辿り着いた、眼前には夢で見たのと同じ景色――かつて見た春の景色が秋へ衣替えをしている状態――が広がっている。
地に生える丈の長い草は白く染まり、木の枝についた葉は紅葉の兆しを見せる。
この草原の奥には切り立つ崖がある。それのどこかに洞穴があるはず。
「ねえ、蓮子……」
「どうしたの、メリー?」
「もし……洞穴や壁が無かったら……その時は、ご――」
「いいよ。心配しなくて」
蓮子は私の謝罪の言葉を遮り、手を差し伸べた。
「少しでも可能性があれば探る。それが科学者の基本だからね」
彼女は物理系の専攻。それ故に理系学問の心得を会得している。
先程の言葉は恐らくその心得にある物なのだろう。
それにしても、可能性……か。とても夢溢れる言葉だった。
私が夢以外で幻想郷へ入れる可能性もありえるのかな。


しかし、中々洞穴は見つからない。
確かに夢で洞穴周辺の地形は見たが、草木と崖で囲まれたこの場では似たような景色ばかりで見分けが付かない。
しかし、これはこれでいいのかも知れない。
なぜなら自分の能力の解明に付き合わなくて済むから。
だって洞穴の存在自体が幻想なら、あの夢の設定は幻想となり、私が夢から覚めたのはただの生理現象だと言い訳ができるもの。
蓮子には申し訳ないけど、不安から逃げる事ができるなら、それはそれでいいかな。
そう思い始めていた、その時だった。


「メリー、あそこに洞穴があるよ」
蓮子が指差す先の崖に、小さな洞穴がある。
夢で見た洞穴と全く同じ形をしている。
見つかってしまった。見つかってしまった以上、洞穴には入るしかない。
見つけたのに入らないのでは、私はただの臆病者で終わってしまうからだ。
私は覚悟を決めて、蓮子と共に洞穴へ入った。


洞穴に入ると、視界は少し暗くなった。
視界は手を伸ばした少し先までしか伸びない。
私達二人は、予め用意しておいた懐中電灯を取り出し、灯りをつける。
「さてと、問題はこの奥に例の壁があるかどうか、だよね?」
私はゆっくりと頷く。
洞穴の存在と内部の暗さまでは夢の通りだ。
後は、あの奇妙な壁さえあれば……。


懐中電灯の明かりを頼りに洞穴を進む。
蝙蝠の羽ばたく音や水滴の滴り落ちる音を聞きながら、私達は歩みを進める。
数分程進んだ先で、ついに――。
「見てよ。メリー、この壁がそうじゃない?」
懐中電灯の灯りの先に、例の奇妙な壁を見つけた。
その壁は夢で見たのと同じ大きさで、絵に描いたような虹模様もある。


「メリー、これが夢の中で見た壁なの?」
蓮子の問いかけに私は頷き、壁に近づく。
いよいよだ、私の能力の真偽を審判する時が来た。
これが夢通りなら、私は壁に手を着けると手がすり抜けるはず。
ここで私は夢通りに手をすり抜けさせ、能力の証明を行う。
それだけでいい。とにかく私の能力が正しい事さえ分かれば安心できる。
そう思い、壁に手を着け、更に奥へ進めようとするが……。


壁は私の手を遮り、壁の中へ進ませない。
「ど、どうして……」
夢通りにはならないの?
夢だと腕が壁を通過するはずなのに……。
ここまで夢通りだったのに、どうして最後の最後でこうなるのよ……。
あの夢は私の能力を否定するために存在したの……?
目の前の壁は、私の心にとっても壁となって立ちはだかる。
辛く重い、そして光を一筋も通さない絶望として……。
「メリー……」
蓮子は私の肩に手を乗せた。私を慰めてくれるのだろうか。
「私にいい考えがあるんだ。少し私の方に向いてくれないかな」
いい考えがある? 一体どんな内容なのだろう。蓮子の事だ、きっと現状を打開できる名案なはず。
蓮子の言葉によって私は気を取り直し、壁から手を離し、蓮子の方へ向いた。








「トンネル効果?」
蓮子が口にした単語に、私は首を傾げる。
今までに聞いたことのない言葉で、恐らく蓮子の専攻分野に関する単語なんだろうなという事が辛うじて分かる程度だった。
「これは私の仮説なんだけど……」
蓮子は指示棒を手に持ち、二つの線を並行に、かつ離して描いた。
彼女はこんな山のような自然に赴いて、綺麗な空気の下で輝く夜空を眺めながら考え事に耽るのが趣味で、その際にこの棒がとても役に立つらしい。
常々蓮子の思慮深さには感心する。能力をきっかけにしないと考え事ができない私とは比べ物にならない。
いや、蓮子は夜空を見ると時と場所が分かるんだっけ。
それならその能力を介して想像を膨らませて考え事をしている可能性だってあるし、私とやってる事は似ているよね。
私は心の中で湧き上がる者を感じた。やはり憧れを抱く人と共通点があると嬉しい。
「これは確かに結界だよ。恐らくね、ただ、すり抜けさせるには一工夫が必要だよ」
一工夫が必要? どういう事なんだろう。
地面に描かれる図を見つめながら、私は物思いに耽った。
「ここが私達のいる世界だとして、そこに幻想郷が隣り合わせに存在しているんだ」
二つの大きな円を描く、二つの円は一部が触れ合っている。
「だから、メリーは今まで幻想郷の中を見てこられたんだと思う。確か結界をすり抜けるんだよね」
蓮子の言う通り、私は結界の境界を見る事ができる。
ここまではよく分かる。でもすり抜けられなかったのは?
幻想郷に入れないとしても、せめて中を見る事ぐらいはできてもいいはず。
それぐらいなら、現実世界でも実績はあるのだから。
「で、この壁の場合、確かに結界ではあるんだけど、厚すぎるからすり抜けられなかったんじゃないかな」
厚すぎてすり抜けられなかった……? その発想はしたことがなかった。
「きっとメリーの能力は夢の中の方が強くて、その強さなら腕をすり抜けさせる事ができたんだよ」
私の能力は虚実で、夢の中でしか発揮されない。そのような思考の呪いに囚われていたので、視野が狭くなっていた。
しかし、まさか夢の中の方が力が強いなんていう仮説を出してくるとは思わなかった。
やはり彼女の論理的思考力はとても高く、憧れを感じてしまう。
「夢では腕がすり抜けたんでしょ? 私、メリーの夢が真実を現していると信じているから」
嬉しい。そこまで私の夢を信じてくれるんだ。
どうしてここまで私の能力を信用してくれるんだろう。
もしかすると、彼女も幼い頃は自分の能力を信用してくれる人が周囲に居なくて、孤立した事があったりするのかな。
勝手に彼女が幼い頃の境遇を想像し、赤面してしまう。
私はつばがない帽子を抑え、下に引っ張る。
蓮子がいつもしている仕草の真似だ。
まあ、今回の場合は照れ隠しの意味合いも強いのだけど。
「それで、トンネル効果って何なの?」
"トンネル効果を使えばいいんだよ"
という蓮子の言葉が先程から頭の中でぐるぐる廻っている。
トンネル効果って、何?
そろそろ意味を聞きたい。彼女の思考の道筋を少しでも辿り、そして彼女の世界を垣間見たい。
私の意識は彼女の説明に集中する。


「ああ……トンネル効果について説明するよ」
蓮子は二つの線を並行に、かつ離して描いた。
「これが壁ね。この壁を挟んだ両側に空間が広がっているとする」
棒の先端で地面を引っ掻き、二つの線の間にある砂を散らばらせる。
なるほど、二つの空間は壁によって遮られている。
それは、結界を隔てて存在する世界と幻想郷の関係に似ていると思う。
「で、片方の世界で壁付近で振動を与えてみるんだけど。メリー、どうなると思う?」
片方の線の端に波を描きながら訪ねてきた。


「え、ええっ……」
私はとても困惑した。
どうやって答えを考えればいいのか分からなかったからだ。
この問題の設定は抽象的で、何を基にすればいいのか分からない。
えーと……壁……家……アパート……そうか。
身近な所に答えがあるんだ。
「もしかして、反対側の世界に伝わるの?」
蓮子は帽子のつばを上げる。そして次に
「正解だよ。よく分かったね」
と言った。
再び彼女は棒を地面につけ、二つの世界に波を描いた。
「一部の振動は反対側の空間へ飛び出すんだ」
振動が伝わる……それは分かる。
分かるんだけど、そういえばどうして一部の振動だけがすり抜けるのだろう?
「どうして一部の振動だけが向こうの空間へ伝わるの?」
首を傾げ、頭を掻きながら蓮子に尋ねる。
「ああ……これは可能性の問題なんだ」
「可能性?」
科学の世界で可能性の話が出てくるとは思わなかった。
全ては法則によって決まってるんじゃなかったのか。
「ごく小さな単位であれば、当たり所がよければ向こうの壁にすり抜けられる可能性が出てくるんだ」
なるほどね。
宝くじだって沢山買えばその分当たりやすくなるしね。
それと同じようなものだと思うと、幾分理解しやすくなる。
「だから、一部の振動は壁の向こう側へ伝わるんだ。微量な"可能性"を持つ極小単位の要素が無数にあるからね」
蓮子の説明に、私は頷いた。
私でも理解できるよう噛み砕いてくれるから、蓮子はとても優しいと思う。
でも……。


「つまり……私は何をすればいいの?」
理論は分かったんだけど、いまいち行為と繋がらなかった。
可能性を上げればいいんだろうけど、それにしては私の手は大きすぎる。
どうすればいいのだろう。
「メリーの手が壁をすり抜けさせるのは難しいけど」
うん。
「メリーが何度も壁にぶつかれば」
うんうん……って、ええっ。
「能力ぐらいは幻想郷に出られるんじゃないかな。それから能力で結界を弄ればなんとかなるよね?」
「いや……それはおかしくない? そもそも私結界弄れるとは言ってないよ」
確かに私はその内結界を弄れるようになるかも知れないと思った事はあるけど……。
いくらなんでも憶測で話を進めすぎじゃない?


「そう? 私の理論に間違いはないよ」
「科学は間違いの連続で発展してきたじゃない」
「それは結果論さ。最初から自論が間違いだと思う学者はいないし、それに――」
蓮子が言った次の言葉で、私の反論は潰えてしまった。
「仮説が正しいかどうかはやってみるまで分からないじゃないか。科学者に仮説と実験は必須要素だよ」
やってみるまで分からない……。
確かにそうだ。どうして私は不確定な蓮子の理論を否定しようとしたんだろう。
不信を抱き始めた自分の能力の検証の為に蓮子を連れてきたようなものなのに、さすがにこれは自分勝手すぎるよね。
私は私で、協力できることは協力しないと……。


「で、どれぐらいの力で壁にぶつかればいいの?」
「できるだけ強い方がいいよ。本気でぶつかって、できれば頭から」
前言撤回、私を殺す気か。
「そ……そんなに強く睨まないで」
「意地悪にしては性質が悪いと思ったので。蓮子って冗談には頭が回らなくなる性格でした?」
「一応理由はあるんだよ?」
へえ、弁明ぐらいは聞こうかしら。
「可能性を考えるとしたら、より大きな力の方が確率が上がるよね?」
「分かるわ。物を壊すにしても大きく叩いた方が壊れるまでにかかる回数が減るしね」
「そういうこと。身近な現象としては音があるね。壁越しに伝わる音は、大きな音の方が伝わりやすい」
「そうね。蓮子の部屋を訪ねた時にそれはよく分かったわ」
そう、私が答えに辿り着いたのは蓮子のおかげ。
あの日、蓮子の部屋を訪ねた時、扉の向こうから普段聞くことのない声が――
「え……それはどういう……」
「気にしないで、話を続けて」
これ以上は触れない方がよさそうだ。
蓮子の為にも、そしてそれを種に楽しむ私の為にも。


「だから、強くぶつかった方がいい。ここまでは分かるよね」
「どうして頭からぶつかった方がいいのよ?」
「それは、メリーの能力は頭にその源があると思ったからだよ」
「……どうしてそう思ったの?」
私の能力の源か、今まで一度も考えた事がなかった。
当たり前のように私に宿っていたと考えていた能力だし、てっきり全身に宿っているのかと。
「メリーは、夢の中でしか幻想郷に入れないんだよね?」
「……うん」
それが現在の私の悩みの種。
少なくとも私の記憶には「夢以外で幻想郷に入った」という事実は無い。
それが故に、もしかしたら幻想郷は私の妄想なんじゃ……という不安に囚われてしまう。
どうしてあんな夢を見てしまったんだろう。見ていなかったら、こんな事に悩まされる事はなかったのに。
「だよね。それが理由なんだ」
「どういうこと?」
「夢は脳が作り出すんだよ」
知らなかった。私としてはてっきり心臓が作り出すのだと考えていた。
だって、心臓移植された患者は、その心臓の持ち主の性格に似るという話があるから。
私は幻想的なお話に興味があり、暇になっては度々そうした話を調べて読み、私の心を満たしていた。
こうした愉しみ方が、今の私の糧となっている……多分。
「その日の記憶を整理するために見ていると言われてるんだけど、理由は分かってない」
「それで、私が幻想郷に入れるのが夢の中だけだから、脳に能力の源があると?」
くせ毛を指で巻きながら蓮子に尋ねる。
「そうだよ。察しがいいね」
蓮子は帽子を触り、向きを整える。
「メリーの能力が最大限発揮されるのが夢の中ってことは」
蓮子は鞄に手を入れ、物を漁り始めた。そういえばいつも持っている鞄より一回り大きな鞄を持っている。
まあ、山に調査に出る以上当然ではあるんだけど、蓮子ってこんな鞄持ってたんだ。
恐らく澄んだ空気で夜空を見て考え事をする際に使ってるんだろうな。
「能力自体が脳と深いつながりがあるんじゃないかなと思ったんだ」
そして出てきたのがスプレー缶。
「……これは?」
恐る恐る尋ねる。もしや非合法の薬ではないでしょうね?
「そこまで怖がらないでよ、メリー」
蓮子は両手を前に出し、誤解である事を示す手振りをした。
「これはただの冷却スプレーだよ。痛みを和らげるために使うんだ」
「……他の手を取る気はないんだ」
「もちろん。最善の手を尽くさない理由はないからね」
そりゃそうだけど、さすがに限度があるじゃない?
まあいいか、今回は特別だ。
何しろ、蓮子が私の夢を信じているという一点だけで私は嬉しい。
その信用を損なわない為にも、今は蓮子の言うとおりにやるしかない。












こうして私を用いた実験は始まった。
やり方はこうだ。
まず、私が身体を強く壁にぶつける。
さすがに頭をぶつけるのは命に支障をきたすので、そこは妥協することになった。


強く、まるでドアを突き破るかのように突進する。
壁に私の身体が強くぶつかり、鈍い音が響く。
「きゃあっ……!」
痛い。
壁から跳ね返る衝撃波が全身を駆ける。
「どう? 壁の向こう側になにか感触はある?」
「いや……全く……」
私の感覚は壁の向こうにすり抜けなかった。
感じたのは痛覚だけで、目は相も変わらず奇妙な虹色模様を映し出すのみ。
今までに見た事のある幻想郷の景色は何一つ映り込んでいない。
「そう……じゃあ、もう一度ぶつかって」
そう、私は壁の向こう側に影響を与えるまで、つまり私が手ごたえを掴むまで壁に体当たりを繰り返さなければいけない。
壁と私、どちらが先に音をあげるか、勝負しましょう。










先に音をあげたのは私だった。
何度も壁にぶつかり続けた身体は限界を迎え、ひび割れの陶器のように痛みを訴える。
多分骨にひびは入ってないけど、これじゃ明日には青あざができていそう……。
「もう、スプレーは空っぽだよ……」
蓮子は冷却スプレーの缶を振り、困り果てた表情を浮かべる。
一方壁は何の変化も示さない。
いくら冷ましても取れない痛みを前に、私達は決断をすることにした。
「蓮子……そろそろ……」
「そうだね。今回はこれで終わりにしようか」
蓮子に肩を持ってもらい、何とか立ち上がる。
残念だけど、何も起こらないなら諦めるしかない……。
















「まさか、永遠亭の近くにこんな洞穴ができただなんて……」
永遠亭の近くに突然できた洞穴、火鼠の衣が発する火を灯りとして使い、慎重に奥へと進む。
私は輝夜、いわゆる蓬莱人。
月で禁断の秘薬――蓬莱の薬に手を出し、穢れ多き地上に追放された、いわば永遠の罪人。
永遠の罪人というのはとても聞こえはいいし、私自身それに浸って傷心的な人格でいてもいいんだろうけど。私自体はそこまで悲観的には見ていない。
だって、地上はこれ程までに変化に富み、それに私が知り得ぬ事柄と沢山触れ合えるんですもの!
……まあ、月の都に居た頃に私がそう思えば恐らく楽しかったんでしょうけど、要は環境に文句をつけて、自分から楽しもうとしていなかった私に問題があった。
私が思い込み激しすぎるが故に地上に追放され、それを助けにわざわざ地上に身を堕ろしてくれた永琳には本当に悪いと思っている。
まあ、たまに監視の目が邪魔だと思う事もあるのだけれど。大丈夫よ。私は不死身だし、よっぽどの事が無い限り戻ってこれるって。
というわけで、どうしてもこの洞穴が気になった私は今回も永琳の目を掻い潜って屋敷から抜け出し、この洞穴に入った。
入った理由は大きく分けて二つある。
一つは私の好奇心、そして、もう一つは、私の生き方について見直す為だ。


私の生き方を見直すとは、簡単にいうと、竹林に住む蓬莱人との付き合い方を考え直すということ。
竹林に住む蓬莱人――妹紅との交流に少し飽きと不安を感じている。
彼女と交流するきっかけは、私が竹林に隠居したばかりの頃に起こった。
私が竹林を散歩していた時に、偶然出会ってしまった。
私はその少女を見ても何とも思わなかったんだけど、彼女は私の姿を見るやいなや名前を叫び、殺気を匂わせながら襲ってきた。
その時私は彼女の攻撃を難なく回避して勝利したのだけど、私は彼女を放っておけなくなった。
私の攻撃で彼女を虫の息まで追いやった時に、彼女が不死の薬を飲んだ自分の過ちについて呪詛を吐いたからだ。
私は彼女に不死の薬なんて渡した覚えはないんだけど……と過去について想起すると、彼女は次に岩笠の名前を出した。
曰く、薬を処分する為に富士山を登る岩笠を一時の過ちで襲い、何らかの天命のままに薬を口にしてしまったらしい。
そういえば帝と手紙のやり取りをした際にそのような名前が入っていた覚えがある。
ということは帝は薬を処分しようとした訳か、勿体ない。折角不死になれる所だったのに……。
この時私はそう思ったが、彼女と交流する度に帝の判断が賢明であった事を思い知る事となる。
結果的に彼女は私が帝に送った薬を飲んで不死の呪いにかかった訳だから、私が彼女を呪ってしまったに等しいわけだ。
ああなんという事をしてしまったのだろう。私がほんの好奇心を働かしたが故に罪無き少女が不死になるだなんて。
ちなみに後で知ったが、彼女の父親は無謀にも私に求婚した貴族であるらしい。あの贋作を持ち込んでそれらしい話をでっちあげた、あの醜男である。
初めて見た時は美形で体型もよかったし、本物を持ってきたと称してあの硝子細工を持ってきた時は驚いた。
それほどの行動力があるなら、まあ結婚してもいいかな。お話も面白い物を作ってくれるしと一種の諦観もしたものだった。
でも、あの後職人達が来て報酬金の不払いを請求された後の豹変っぶりは酷かった。
私の前ではあれほどに美しい表情を浮かべ、快活に話をしていたのに、自分より身分が下の者に目論見を台無しにされると、これである。
私は目の前の人間に本心を見ずに惹かれた事を後悔した。
見た目だけでなく心も美しい。それが真の美しさだとあの時程に思った事は無いし、その教訓が今の私を作っている。
だから私は彼女の罪を少しでも償い、そして誤魔化すために付き合っている。
……まあ、私自身とても退屈で、殺しても生き返る最高の遊び相手が欲しかったというのもあるけど。
それで話し相手にもなれば、正に最高の人材よね。


そこまではいいのだけど、さすがに数百年も争いによる交流を続けていると飽きが生じてくる。
だって彼女の攻撃、大体似たような物ばかりだし――不死鳥を活かした炎の攻撃と、怨念による呪詛攻撃の二通りである――それに大抵の場合、私が勝つし。
殺し合いに行くたびにどのように彼女を痛めようか考える事自体はとても楽しかったけど、さすがにその方法にも飽きが生じてくる。
おっといけない……これが私のもう一つの悩みである、心への影響。
どうも殺伐とした交流のみを続けていると、どうしても殺意を籠めることになるので、心に負担がかかってしまう。
だってそうでしょう。私達の交流はスペルカードルールに則らない、純粋たる殺伐遊戯だもの。
攻撃に勢いを込めるには、どうしても本気で相手を殺す! という強い意志が必要になる。
蓬莱人にとって、心は身体を現す大事な要素。
リザレクションする際に身体を構成させる場合、自身の自己イメージ――つまり心が基となるの。
妹紅だってかつては黒髪で頼りない見た目だったけど、自身は俗世離れして生きていくんだという決意をした時、今の姿に変わったと聞くし。
彼女がもんぺを履いてるのはいつでも場所を変えられる活動性を得るためだし、もんぺに御札を貼ってるのは自分への呪いを戒める証。彼女は自分の罪を自分で背負っていく事に決めたんだと語っていた。
まあ、その割には岩笠を殺したことは時効だと思ってるらしく、どちらかといえばあの場面で出くわした岩笠に対して怨念の意を持っているらしいけど。
おっと、話が逸れすぎた。とにかく蓬莱人は自分の心が如実に姿に現れてしまうから、そこを穢してしまうのはどうしても避けたかったという事が要点になる。


では心を癒せば少なくとも殺し合いで荒む精神の治癒はできるし、何よりも気分転換をする内に本当の付き合い方が分かるかも知れないよね?
そこで私は自然界の神秘を眺めて心を鎮める事により、彼女との付き合い方を閃こうと努力しているというわけ。
古来より芸術品と自然の景色は心を鎮めると言われているからね。
私だって一応貴族なのだから、その程度の嗜みは持っている。
ほら、つい最近にも月の都の技術物を展示する催し事を行ったのよ。
あの時は宣伝記事に思い切った事を書いたな、あれは香霖堂で読んだ雑誌の口調を真似ただけなんだけどね。
そんな事を思いながら歩いた末に、私はとても珍しい物に出会った。
「……わぁ……きれいな壁……」
洞穴の突当り、そこにあるのは奇妙な壁。
何が奇妙かといえば、それは奇妙な模様に集約される。
色の境目のない虹が描かれているのがとても印象的で、自然界では存在し得ない色合いだった。
七色といえば、この私が持つ本物の蓬莱の珠の枝。これも七色の珠を持つ代物。
でも、それは七色を直接持つけど、目の前の壁はそうではない。色の境目が全く分からなくなっている。
これは雑談だけど、妹紅の父親は硝子細工で七色の珠を再現しようとし、そして仄かではあるんだけど再現してみせた。
でもあれはあまりにも淡すぎて、遠目から見ると同じ色に見えかねなかったわね……。
それに比べて私が持つこの輝かしい七色の珠。ああ、これが本物の輝き。そなたはなぜこれ程までに美しいの! それは、持ち主の貴方が美しいからです!
……っと、こうして自己陶酔するのは止めにしよう。私の完璧さなんて今更振り返る必要ないのだし。
まあ、本当に完璧ならこんなことで悩んだりしないのだけどね。


この壁の色合いは神がくれた奇跡なのか、あるいは人為的な力によるものなのか……。
古来より人類は不思議な物に力が宿るという信仰を持っている。
蓬莱人の私が今更人類の行動をとるのは可笑しいとは思うが、一つ試してみよう。
妹紅との付き合い方には人間が持つ精神性が大事になりそうな予感がするし、ちょうどいい機会だと思う。
そこで活躍するのが、この私の能力。
私は須臾を操ることができる。
その能力の一つとして、須臾を集めることができる。
この瞬間に存在する可能性がある複数の私を集め、一つの私として構成する。
いわば私は"可能性の世界"を見る事ができるといっても過言ではない……はず。
この能力って楽しいのよね。
だって、私だけ無数の世界を持ってるようなものじゃない?
この世界の事を深く知っているのは私だけ、そう思うと私だけが知る事柄が増えるし、何よりもこの須臾の世界という名の秘密基地を持っている気分にだってなる。
秘密基地は私とは縁が遠いんだけど、妹紅が妖精が住む家の事をそう言って囃し立てていたのを聞いて存在を知った。
噂によると彼女達は神社の近くに生えている木にできた穴に住んでいるらしい。


余談はこのぐらいにして、私はこの力を壁に使うつもりでいる。
せっかくこんな変な模様を持つ壁に出会えたんだ。
これが特殊な力を持つ珍品である可能性は高い。
とは言っても生憎今の私にはこの壁の能力の使い方が分からない。
そこで、この"可能性の世界"の出番となる。
この世界なら使い方が分からなくても能力の有無を確かめることができる。
なにしろ、須臾に散らばる無数の私が試してくれるんだもの。
何かしら使い方は探し当ててくれるはずよね。
というわけで、早速壁に手を触れてみる。
手のひらを壁に着け、ゆっくりと撫でてみる。
とても冷たいが、特に何も起こらなかった。須臾の私も沈黙したまま。
「なんだ……何もないんだ……」
思わずため息と共にそんな声が出てしまう。
まあ、そうよね。
いくら模様が奇妙だからって、そう簡単に不思議な物と出会えるはずが――


その時だった、遅れて戻ってきた私の"一部"が何かの力を受け取っていた。
それは数万は下らない数はある須臾の私の内の、ほんの一つ。
須臾の私が私と合体した時、金切り音が脳内で鳴り響き、頭を抱え、目を瞑る。
それはとてもおぼろげでしかないが、とある少女の像を映し出す。
うーん……どこかで見たような……。


ふう。ようやく脳内で響く煩い音が止んだ。
とはいえ脳裏には須臾の私が掴んだおぼろげな情景がこびりついたままだ。
とても興味深いそれの意味について悩み、頭を抱えながら洞穴を出ると、少女に声をかけられた。
「あら、輝夜じゃない」
抱えていた頭を上げ、少女の姿を見やる。
その少女は紅白の巫女衣装を着ている。
かつて私を撃破した組の内の一人。霊夢だった。
私を撃破した組は最低でも4組あって、各組は二人組で行動していた。
4組に撃破されたと書いたが、それは4組に撃破される"可能性"を見たともいえる。
須臾を集めて見た結果だからね。
なので、歴史上では一組にしか撃破されていない。


「れ……霊夢じゃない。どうしてここに居るの?」
「どうしてって……異変が無いか探りに来たのよ」
なるほど、この洞穴は突然開いた物。
異変を解決するという彼女の役割上、ここに来るのは何ら不思議ではなかった。
「むしろ私があなたに聞きたいぐらいだわ。永琳無しで行動しているなんて珍しいわね」
「わ、私だって一人で行動することぐらいあるわ……」
まるで永琳が居ないと何もできないとでも言いたげな言葉だ。
失礼な、私は独りでも行動できる。
そんな反論を心の中で抱えた時、胸の奥でどくんと鼓動が高鳴る。
それと共に、霊夢の姿が先ほど脳裏にこびりついた情景に写る少女の姿と重なる。
まさか、この霊夢が、先程壁越しに見た少女なのだろうか。


この情景を拾った須臾の私が、今すぐあの交流を行えと催促してくる。
私は妹紅と他の方法で仲良くしたいと思っているが
さすがに数百年もしてきた交流をいきなり捨てるのには抵抗がある。
確かに殺し合いからは抜け出したいと思っていたよ。けど、その交流はやりすぎなんじゃ……。
何しろ妹紅にとって私は数少ない不死仲間だが私にとっての妹紅も同様に同じ関係なのだから。
突然あの関係に入って仲を悪化させたくはない。そんなリスクを犯すなら、従来のやり方を続けたい。
なら、事前に他人を相手に試せばいいのよね。悪いけどこの巫女を相手に試させてもらおうかな。
今ならこの仄かに宿った心を言い訳にできるし。


思わず霊夢の手を引っ張り、洞穴の奥へと連れ込む。
「え、ちょっと、ええっ!?」
彼女の素っ頓狂な声を無視する。
こんな事を彼女にすると酷い目に遭いそうだが、その心配は必要ない。
その理由は、彼女一人では私に敵わないから。
彼女は幻想郷の調整役だし、恐らく妖怪退治が得意なんだろうけど、生憎私は妖怪ではない。
だから彼女の力が怖くなかった。
そもそも二人がかりで、しかも妖怪と手を組んでやっと相手にできるくらいだもの。
一人じゃ益々敵いっこないよね。


霊夢の声を無視し続け、洞穴の奥へ向かって歩みを進める。
奥へ進むに従って霊夢の声は少しずつ弱くなり、口数も減っていった。
そして、ついに奇妙な壁がある場所まで霊夢を引っ張ってきた。
無理矢理身体を抱き、例の奇妙な壁に背を着かせる。
「な……なによ……」
彼女の反逆的な目が私の目に刺さる。
かつての敵で、思考がいまいち分からない月の者に攫われたんだもの。
慣れてない者なら誰だってこんな表情を浮かべるはず。
しかしこんな事で怯んではいられない。
彼女の前髪を手で除け、額に口を着ける。
「うっ……」
顔を背け、不機嫌そうに声を漏らす。
ただでさえ不気味な存在に、こうして性的干渉を持ちかけられたら、そりゃ常人は気味悪がるよね。
でも、その気持ちを抱くのは勿体ないなあ。
せっかく私が仲良くしようとしているというのに。
私の方が年上なのよ? 絶対貴方には損させない。私が保証するわ。
まあ、私自身は他人に身体を開いたことがないのだけれど。


霊夢の抵抗を難なく避け、身体を霊夢に近づける。
互いの脚を絡め、強く密着させる。
二人の黒髪が混ざり、境目が消える。
髪質のいい私の髪と見分けが付かなくなるということは、恐らく彼女の髪も結構良質なのだろう。
頻繁に妖怪を退治する割には、いい髪の毛してるよね。
指で彼女の髪を絡め取り、口元まで寄せてやる。
「ねえ……霊夢……」
私に宿った極僅かな"可能性"の心が、彼女の心を煽るよう私に指示をする。
耳に熱い吐息を吹きかけ、精神と物理の双方で揺さぶりにかかる。
「私と一緒に……なろ……」
脳裏に浮かぶおぼろげな像は姿こそ分からないが、雰囲気は霊夢に似ていた。
その像を頼りに、私は目の前の少女を求める。


胸元から手を挿し入れ、霊夢の胸目がけて手を伸ばす。
さらしを適当にずらし、控えめな胸を撫でる。
「んっ……く……」
霊夢は眉間に皺を寄せ、厳しい視線を私に向ける。
しかし、そんな彼女の態度とは裏腹に、吐息は少し熱くなっている。


「ほら……私のこと、否定しなくてもいいじゃない……」
胸先を捉え、的確に弄ってやる。
すると、霊夢は唇を小刻みに震わせ、吐息を不規則に吐き出すようになる。
快楽が身体に溜まってきているのだろう。
胸に耳を当てると、心音が高鳴っている。


私は悶える様子を見ながら衣服を肌蹴させ、
もう片方の手を腰に這わせて下半身へ下げていく。
「んっ……っんんっ……はぁ……」
身体を跳ねさせ、おかしな声を漏らす。
あれだけ強情を張っていたのに、今では抵抗する余裕すらないらしい。
乳首を刺激して霊夢の吐息を確かめ、年相応の少女であることを確認する。
いくら調整役といえど、人間の定めからは逃れられないらしい。


下半身へ下ろしていた手が腰を通り過ぎ、ついにスカートまで辿り着いた。
腰回りを緩めて下半身を露出させる。
どうやらこちらは普通の下着を履いてるらしい。なんだ、がっかりした。
そのまま下着に手を挿し入れ、敏感な部分を擦る。
「んんっ……っぁ……ぁんん……」
腰を跳ねさせ、吐息を吐き出す要領で堪えた声を漏らす。
その様子からすれば、彼女の口から淫らな声が出るようになるのも時間の問題だろう。
「ほら、その調子でもっと私に身体を委ねて……」
股間の豆を強く押し潰し、更に回してやる。
「んんっ……っんんんんっ……っんんんんんんん……!」
すると霊夢は目を強く瞑り、背を痙攣させた。
股間からは愛液が染み出し、私の指を濡らす。


達した事によって力が抜けたのか、背を壁に預け、ずるずると身体が落ちていく。
身体から熱気が放出され、肌蹴た部分から湯気が浮かび上がる。
そんな恍けた霊夢を見て、私に宿った僅かな心は次の手を急かさせる。
上着のボタンを外し、ゆっくりと脱がす。
服を捲った時に掠れた声があがるが、言葉の意味を成していないので全くに気にかけず続ける。
そうして剥き出しになった身体は上気し、腹部は呼吸に合わせてゆっくりと動き続ける。
腰に手を回し、残ったさらしを解く。
すると霊夢は身体をそらし、何とか胸を視線から外そうともがき始めた。
剥き出しの上半身を見つめられるのが、どうしようもなく恥ずかしいのだろう。
しかし不自由な状態の下で行われるそれは、虚しい努力にしか見えない。
顔を相手の眼前に近づけ、熱い吐息を吹きかけながら、胸先を手のひらで押し潰す。


「ん……んんぅ……んんぅっ……」
達したばかりの身体に新たな快楽が加えられたのが堪らないのか、頭を振り乱している。
私はその様子を見て好意を止めるどころか、湧いて出てきたのが嗜虐心。
ぐっと強く押し、彼女の背をそらさせる。
「んっ……っ……んぁ……あぁぁっ……」
ようやく口を開いてくれた。
大事な役目を担っているせいか強情で、中々声を洩らさなかった。
そんな巫女を、私の手で堕とすことができた。
この満足感に私は悦び、股間に滲みを覚える。


一度声をあげてしまった声帯は、抑止力を失ってしまう。
「あぁっ……あっ……っんん……っはぁぁ……」
彼女は呼吸のついでに声をもらし、股体をすり合わせる。
そのどうしようもない欲求が、自身の身体を更に欲望の崖へと突き進ませる。
一度花開かせてしまった責任を取る必要がある。
彼女のスカートを解いて秘部を下着のみにし、下着に再び手を挿し入れて陰核弄る。
「ああっっ……あんんっ……ぁはぁ……んぁぁっ……」
彼女はたまらなく腰をよじらせ、髪を艶やかに揺らす。
顎は上を向き、白い吐息が吐き出される。


そろそろ頃合いだろう。
陰核から手を離し、秘裂の入り口に手を這わす。
何が起こるか理解したのか、彼女は眉を潜める。
その期待通りに、私は秘裂に指を立て、ゆっくりと挿し入れていく。
快楽によって蕩けた身体は愛液を染み出させ、淫靡な水音が周囲に響く。
「ひゃぁ……あっ……あぁっ……っんんっ……」
体内に異物が入る感触に彼女は驚き、身体を震わせる。
今までしたことがないのだろうか。
あの性格でそれは考えにくいが、巫女故のしきたりなのかも知れない。


「ぁっ……んんっ……ぁっはぁっ……うぅっ……」
抽送を行う度に彼女の口から洩れる声には、悦びと呻きが混じっている。
慣れてないと異物感が強いから、そこは仕方ないよね。
私も大昔にしたことがあるけど、最初の頃は純粋に気持ちいいとは感じられなかったし。
淫らな水音を秘裂から立てながら、抽送の速度を速める。
「あっ……あぁぁっ……っひ……や……やめぇっ……!」
彼女はたまらない感情を声にぶつけ、腰を跳ねさせる。
その跳ね具合は面白い位に抽送の間隔と合っている。
そろそろだろうか、気を抜かずに抽送を続ける。
「あぁっ……あぁんっ……やめ……ぁ……ひ……い……くぅ……!」
もはや地上で跳ねる魚と化した彼女の身体は、声帯に声を催促する。
もっと艶やかな声を出して、相手を誘惑しろ。
そんな催促に応えるかのように、彼女の声は艶やかに、そして切羽詰まる。
そろそろ終わらせた方が、彼女のためになるかも知れない。
少し指を曲げて秘裂から勢いよく抜いた。


「あぁ……んんぅっ……い……くの……! ふぁあああああああっ……!」
彼女は背を大きく反らしたかと思うと、身体を大きく震わせて達した。
秘裂からはでらでらと愛液が垂れ、下着を濡らす。
閉じた瞼から覗き見える瞳は光が灯っていない。
そして、剥き出しの胸と頬はうっすらと赤みを帯びている。
少女だった彼女は、今や艶帯びた女性の欠片を醸し出している。


彼女の身体に青白い光が灯り、後ろの壁に伝う。
後ろの壁は、例の奇妙な模様をした壁。
やはり、この壁はただの壁ではない。
それが分かっただけでも、とても大きな収穫だった。




















壁にぶつかり、結局何の成果もなかった。
あれから私達は洞穴から出て、木々が生える周辺を探索した。
秋を迎えたばかりの今は実りの兆しを見せ、実を吊り下げた植物なんかを見つけては、蓮子と共に観察した。
そして、今は帰路につく途中。
前方を蓮子が歩き、その後ろを私が歩く。
豊富な知識を持つ蓮子だもの、私が前を歩くのとは比べ物にならない程頼りになる。
「秘密基地、たくさんあったね」
蓮子のその発言をきっかけに、脳裏に懐かしい記憶が蘇る。
秘密基地は私も組んだ事がある。
男友達と一緒に木の枝を使って基地を組み、葉が沢山付いた枝を重ねて屋根にした。
そして捨てられていた通信機器を拾い、どこかの雑誌や漫画で読んだ通信の仕方を真似たりした。
今振り返ってみるとただの大人の役割遊びだったりするんだけど。
それでも、当時はそれが本当にあるんだと信じていたんだよね。
怪獣を撃退するために組まれた部隊、そんな特撮で見た部隊は本当にいるんだという事を。
幻想郷が、そんな妄想の仲間入りをしなければいいのだけど――。


「メリー?」
蓮子が私の顔を覗き込んでいた。
いけない、すっかり回想に気を取られていた。
「わ……わわっ……蓮子じゃない……驚かさないでよ……」
「ごめん……メリーがずっと上の空だったからさ」
うん。それは謝らないとね。でも、洞穴で何も起こらなかった事が未だに心に残るの。
いいや、とりあえず気分転換しよう。きっと、話をしていれば気も紛れる。
「子供の頃、秘密基地を作ったことを思い出していたの」
「へえ、メリーも秘密基地作ったことあるんだ」
「うん。海外でも似たような文化があったからね。蓮子は?」
蓮子も作ったことあるんじゃないだろうか、秘密基地。
雰囲気からすると男勝りな所があるし、如何にも経験ありそうだけど。
「私? うーん……秘密基地と呼べるほど立派な物じゃないよ」
「そんな事を言ったら私の基地だって立派ではないよ。何をしていたの?」
「星を見て、時間を確かめてた」
ああ、彼女の能力上、そんな楽しみ方ができるのか。
壊れたがらくたを使ってごっこ遊びをしていた私がとても恥ずかしくなった。


そんな会話を行いながら歩いていると、再びあの場所に着いた。
例の洞穴だ。
「メリー。まだチャンスはあるけど……どうする?」
蓮子は私に振り返り、目を合わせた。
私は何も言わずに頷く。
さすがにこのままチャンスを逃す訳にはいかない。
どうしても、私が見ている結界が本物の結界である事を証明したい。
どうせこのまま帰っても、永遠に私の心にはわだかまりが残ったままだ。
いや、わだかまりでは済まないかも知れない。それは私の心に病巣を、最悪の場合、それは私を死に至らせる。
そんな物騒な妄想でさえも頭を過ぎってしまう。


洞穴に入った私達は、再び奇妙な壁の前に辿り着いた。
壁は変わらず、奇妙な虹の模様を浮かび上がらせている。
「うーん……何も変わらないね……」
蓮子は壁に手を触れ、壁を撫でている。
やっぱりこの壁には、何もないのかな……。
私はその不安と昨日見た夢を思い、名残惜しそうに壁に触れる。


すると、壁が青白く光り、手を着けた私の腕に伝った。
「な……なにこれっ……きゃぁっ……」
やがてそれは全身に行き渡り、私の視界を一瞬染める。
「メ、メリー!? 大丈夫!?」
視界から眩い光が去った後、私は急激な眩暈を覚え、バランスを崩して倒れそうになる。
私の悲鳴を聴き、慌てて蓮子が私の肩を持った。


私の頭の中に、とある風景が雪崩れ込む。
ここと似たような洞穴の奥にて、霧の人影でしか見えないが長髪の少女が二人、壁に身体を摺り寄せて交わっている。
その壁には私達が見つけた奇妙な壁と同じ模様が描かれている。
片方の少女がもう片方の少女を壁に密着させ、身体を貪っている。
責められる側の少女はすっかり吐息を荒げ、腰を跳ねさせる。


二人の姿は霧の人影でしか見えず、顔や服装までは見えない。
ただ一つ分かる事としては――。


それは確かに、幻想郷が向こうにあるということだった。
「見えた……見えたわ……蓮子……」
「メリー!? それは本当なの!?」
蓮子が目を輝かせて言う。
うん、私は本当に見たの、だから――


蓮子を壁に押し付け、顔を両手で抑えて唇をつける。
「んんっっ……!?」
蓮子は目を見開き、驚いた声をあげる。
ふふ、私が見た幻影、それがもしかしたら壁の使い方なのかも知れない。
だから蓮子、今度は貴方も付き合ってね。
さっきは私だけが身体を痛めて検証したんだもの、今回ぐらいはいいよね。


蓮子は両手を私の身体に着け、身体を離そうとする。
「んっ……!」
しかし私はその手を避け、彼女の目に触れる。
私は幻想郷の詳細をもっと見たいの。霧状だった少女達をもっと詳しく見たいの。
探究心は科学では必須の教養なんでしょ? ほら、ちゃんと私が幻想郷を見たという証拠もあげるから協力してよ。
こういう手がかりさえあれば蓮子だってこれを信用して、喜んで協力してくれるよね?


舌を突き入れ、蓮子の腔内を舐めとっていく。
「んっ……! んっん……!」
蓮子は脚を使って私の身体を引き剥そうとする。
どうしてここまで抵抗されないといけないのだろう。
別に赤ちゃんができる訳でも、ましてや失う物がある訳でもないのに。
仮に私が男で、相手の処女を奪うとかなら大問題だと思う。
でも実際はそうではない。ただ身体を重ね、情欲を貪るだけ。
無くなるのは体力と時間だけ。
それだけの損失で幻想郷の事が分かるのなら試さない手は無い。
そうよね? 蓮子だって同意してくれるよね?


舌を器用に使って蓮子の舌を引き出し、互いに絡める。
ざらざらとした感触と、舌を覆う唾液の味がとても心地いい。
私はこうして親しく、そして尊敬している人と体液を共にしている。
そう思うだけで身体は熱くなり、鼓動が高鳴る。
私は蓮子と口を合わせ、唾液を交換している。
これって見方を変えれば、唾液が個体の壁を越えて腔内を行き交っていると言えないかな。
一度触れ合った際に交換すれば、身体が離れても痕跡が残る。
これはもしかすると、とても素敵で、かつ夢のある事じゃないかな。
何度も何度も蓮子の腔内に唾液を流し込み、痕跡が残る可能性を高めてやる。
これは儀式、幻想郷を見るためにどうしても必要な儀式。
そう自分に言い聞かせるが、本音としては、蓮子の女性的な部分を見たい。
そう思っている部分もある。


暗い洞穴の中で、少女が二人、卑しい音を立てて口を合わせる。
片方は自分の意思で、そしてもう片方は意思に巻き込まれる形で。
卑しい音の正体は唾液が行き交う音。
暗闇が理性を引き剥がし、むき出しになった本能を卑しい音が煽る。
はたしてこれに逆らえる少女はいるだろうか。
居ないだろう。蓮子は無理だし、私だって無理。


蓮子の荒くなった鼻息を受け、私は口を離した。
唾液が糸になって伸び、暗闇の中で妖しく光る。
やっと自由になった彼女の口から出たのは、罵倒の言葉ではなく――
「はぁっ……はぁっ……はぁ……」
荒々しく、そして艶っぽい吐息だった。
暗闇でよく見えないが、確かに頬を紅く染めている。
瞼は半分閉じていることから、きっと焦点もうまく定まらないだろう。
少し実験してみよう。右手を蓮子の前に出し、指を二本立てる。
「蓮子、これは何に見える?」
「はぁっ……はぁ……さ、三本……」
ほらね。もう蓮子はできあがっている。
もはや理性の壁は崩れ去り、本能が剥き出しになった。
皮肉な事に、私は幻想郷への壁を崩す為に来たのに、今はこうして蓮子の心の壁を崩している。
まあ、いいかな。この行為のついでに幻想郷への壁も崩れればいいよね。
手段と目的が逆転しているけど、どうでもよくなった。


蓮子のブラウスに手をかけ、ボタンを一つずつ外す。
「な……はぁ……なにをしてるの……はぁっ……やめ……はぁ……」
蓮子は胸元に視線を向け、身体をよじるが、私はそんなのには構わない。
ここは山奥、滅多に人は入ってこない。
そしてここは洞穴、私達の姿は蝙蝠以外には見えない。
そう、ここは理性の鎧を剥ぐには絶好の場所。
私と蓮子は身体という壁を越え、心を一つに合わせるの。
能力や意識が壁を越えられるというのなら、まずは蓮子自身の身体で証明してみせて。


ボタンを全て外し、身体の前方が露出する。
下着のフックに手をかけて地面に落とすと、剥き出しの膨らみを手で感じることができる。
蓮子の顔に熱い吐息を吹きかけながら、軽く揉んでみる。
「はぁっ……ぁぁっ……やめてよっ……」
顔を背け、腰を私の身体から遠ざける。
そんな態度とは裏腹に、身体は胸を揉まれる度に反応し、震える。
これだから理性というのはおかしい。本能の欲求を遮るんだもの。
蓮子の説明を借りると、理性と本能の間には壁がある。
だったら、もしかすると本能側を刺激し続けてやれば理性に影響が及ぶのではないだろうか。
もはや言いがかりに近いが、この行為を続ける言い訳には使える。


片方の手を胸に添えたまま、もう片方の手をスカートまで下ろす。
腰をよじり手を避けようと試みる彼女の行為がどうしてもおかしく見えてしまう。
スカートのフックを外し、長いスカートを地面に落とさせた。
脚が露出し、その柔らかい感触がワンピース越しに伝わる。
本当はもっと脱がせたいが、抵抗が激しい状態ではこれ以上は進めない。
下半身の下着に手を挿し入れ、陰核を苛める。
もちろん、指先で乳首を刺激しながら。
「んんぅっ……! っぁ……はぁ……!」
蓮子は身体を跳ねさせ、壁から腰を何度も浮かせた。
声帯は快楽による突発的な発作で震え、呼吸の不規則さを表現する。
そういえば陰核は滑り、強く捏ね回すと水音が鳴る。
やっぱり。理性ではいくら堤防を築いていても、身体はすっかり堕ちている。
そんな嘘つきな理性にはお灸を据えよう。
陰核の皮を剥き、二つの指で強く抓む。


「……っんんん……! んっあああああああっ……!」
蓮子はたまらなく全身をくねらせ、意識を真っ白に染めていく。
秘部からは愛液が染み出し、太腿を伝って私のワンピースを汚す。
口は半開きになり、白い吐息が暗闇に浮かぶ。
ようやく達した。
溢れた本能が理性の堤防を決壊させるのも時間の問題だろう。


私は身体を震わせながら可愛い声を漏らして余韻に浸る蓮子の身体を抱いた。
もはや身体に力が入らないらしく、両膝はだらしなく曲がっている。
ゆっくりと地面に仰向けに寝かせ、股間の下着やブラウスを脱がしていく。
後は靴、靴下、そして目印であるつばのついた黒色の帽子も脱がしてやる。
そうしてできたのは、一糸纏わぬ少女の姿。
仄暗い暗闇の中とはいえ個人空間の外で裸身を曝すその姿に、私は背徳感を覚えた。
いつも理性を用いて話をする彼女が、今は理性の壁を砕かれ、文化の象徴である衣服すらも脱がされてしまっている。
そんな獣と変わらない姿に、私は感情を抑えられない。


私は腰にあるボタンを外し、ワンピースを頭から外し、適当に畳んで地面に置いた。
そして下着を全て外し、次に靴や靴下を外す。
最後に帽子を脱いで畳んだワンピースの上に置くと、私は蓮子と同じ状態になった。
こうして衣服という名の壁が取り払われた今、私達の身体を邪魔する物は何もない。
蓮子に覆い被さり、首筋を舐めながら胸を揉みしだく。
「ぁっ……っんっ……」
蓮子は頭をねじり、身体を揺らす。
手足は小刻みに震わせ、快楽を発散させる拠り所が無い事を私に知らせる。
この調子なら大丈夫よね。手のひらで乳首を押し潰しながら揉んでやる。
すると蓮子は身体を大きく震わせ、太腿を宙に浮かせる。
「っあっ……っはぁ……!」
呼吸の合間に漏れる痴れた声が、彼女の状態をよく表している。
もはや彼女に意思を示す気はなくても、身体が勝手に私に知らせてくれる。
それは本能がもっと交わりを求め、そして子孫を残そうとしている結果。
残念ながら、私じゃ子孫は残せないけどね。


この状態が楽しいので、この責めを続ける。
すると徐々に声に艶が乗り、手足の震えも大きくなっていく。
終いには膝を立たせ、太腿で私の腰を締め付けてきた。
全く、そこまでしてもっと気持ちよくしてほしいのだろうか、蓮子ってこんなにエッチだったっけ。
胸から手を離し、地面に両手を着ける。
「はぁっ……はあ……あぁっ……」
責めから解放された蓮子、しかし余韻を吐息に含ませ、喘ぐ。
この状態ではしばらくの間、人間には戻れないよね。
ああ、なんて可哀想なんだろう。
ここまで来たら私が責任を取って、最後まで道を外させなきゃ。
腰を動かし、互いの陰核を擦り合わせてやる。
「んっ……」
陰核同士が擦り合い、微かに走る快楽で目を閉じる。
指や道具で直接弄った方が遥かに効率がいいが、これはあくまで雰囲気を楽しむためのもの。
それに私はそれほどでもなくても、発情したままで、且つなすがままにされている蓮子としては堪った物ではないだろう。
「んっ……ぁ……! はぁ……ぁあん……!」
ほらね。
鼻にかかった声を何度も漏らし、蓮子は高みへ昇っていく。
そんな痴態を見ていると、私の身体も少しずつ火が付き始める。
「あっ……っく……」
普段あげる事の無い甲高い声を漏らしてしまう。
他人に聞かせた事が無い声なだけあって、とても恥ずかしい。
でも、私さえ我慢すれば蓮子の声がもっと聴けるし、何とか堪える事にする。


互いの陰核を擦り合わせ続ける度に、蓮子の声は高く、そして蕩けていく。
「っん……っあ……あぁん……ぁん……」
立てた膝を私の腰に絡め、より強く擦られるよう姿勢を変える。
弱すぎる刺激が昂ぶる身体にとっては弱すぎて、もっと快楽をせがむようになったのだろうか。
いずれにしろ、私から見れば自ら求めているようにしか見えない。
その淫靡な姿に応えるように、更に腰を速く動かす。
「っんん……! っああああっ……はぁぁ……あぁあんんっ……」
はっきりとした大きな媚声をあげ、蓮子は頭を振り乱す。
手足は大きく震えては止まり、快楽の毒が身体の神経を蝕んでいるのが垣間見える。
そろそろだろうか、実は私の身体も少しずつ昂ぶりを見せている。
「っあ……はぁ……ぁん……」
熱い吐息を何度も蓮子の頬にぶつけ、視界が潤みを得始めている。
今なら互いに上り詰められるだろうか。
腰を大きく動かし、一気に陰核を擦り合わせると、視界が瞬く間に真っ白になる。
「い……くぅ……! いくの……ふぁあああああんっ……!」
「はっぁあ……! あぁあああああああんっ……!」
互いに大きな媚声をあげ、腰を大きく痙攣させる。
手足は何度も跳ね、手や足は指を強く丸める。


互いの痙攣が終わった時、身体を重ね、呼吸を整える事に注力した。
全裸の女子大生が二人、息絶え絶えに横たわっている。
その状況は異常だけど、私達二人にとっては忘れられない思い出になるだろう。
なにしろ、これが私達にとっての秘密基地になるのだから。
場所はもちろんとして、この思い出もね。
























まさか、こんな事になるなんて。
私はただ少しの好奇心と大きな悩みを持って洞穴に入っただけ。
それなのに、私の足元には今、下着と足袋のみを纏った巫女の姿がある。
おかしい。どうして洞穴に入り、壁を眺めていただけでこんな事になるのだろう。
その上に、どうして須臾の私に得体の知れない心が宿るのだろう。
悩みと全く関係の無い霊夢を淫事に巻き込み、そして意識を失わさせてしまった。
ああ、なんて罪深き少女なのだろう私は、やはり永遠の罪人の二の名は伊達じゃなかった。


「はぁ……」
胸を押さえ、熱の籠った吐息を大きく吐き出す。
私の身体は、先程の行為で昂ぶったまま。
私はひたすら責めに努めた結果、巫女だけが達した。
責めを与えるだけで自身に快楽を与えていない。そんな状況で私の身体を昂ぶらせる欲情は行き場を無くして……。


胸を抑えながらその場に膝をつく。
駄目だ、これ以上は抑えられない。
肩は大きく震え、瞳は潤みだす。
目の前の獲物を捕えろと全身の感覚が指示を送る。
頭を振って何とか抑えようとするが、そんな私に立ちはだかるのは先ほど何かが宿った私だった。


その微かな意思は私に再び少女同士が交わる情景を見せ、本能を煽る。
褒美の塊である情景を前に吊るし、本能が前へ出るのを今か今かと待ちわびる。
勘弁してほしい。私はこんな事をしに洞穴に来たのではない。
しかし昂ぶった身体に煽られる本能、身体も着々と準備を進める中で、私は抵抗を続けるのが難しくなっていく。


く、唇だけでも……。
現状を把握した心情が理性を説得にかかり、ついに理性が一歩歩み寄る。
上半身を巫女の身体に近づけ、唇を合わせる。
良心なぞその欲求と本能の衝動により、既に制御力を失っている。
柔らかい感触が再び私の唇に伝わり、心は昂ぶっていく。
自分は今、禁忌の行為に手を染めている。
かつて味わった事のある甘美な状況に心音が高鳴り、そして正常な思考力も奪われる。
巫女の微かな吐息を受けながら、私は舌を口の中に突き入れる。
先程まで責められていたからか、粘度が増した唾液が舌に絡む。
ああ、なんという事をしているのだろう。
自ら背徳的な行為に堕ちるという被虐さに心を震わせ、堪えきれなくなる。
衣服の上から自分の胸を手のひらで押さえ、押しつぶしながら捏ね回す。
罪深き身体は、自分で罰さなければならない。
「んっ……ぁ……」
熱の籠った吐息が口から吐き出され、巫女の顔に当たる。
衣服の上からとは思えない程鋭利な刺激が全身を貫き、目尻が更に熱くなる。
私の身体は今、堪え切れない程の情欲に支配されている。
身体の奥から止め処なく湧き出る欲求が、私の脳内を占領していく。
その源泉は恐らく、私に宿った微かな心。
ああ、やっぱり罪人の女人には塗れ場が似合うの。
地上に堕とされたばかりの頃に僅かに耽っただけではあるけど、久々に解禁しよう。
これは懐古ではなく、初心に帰るだけ。
そう自分に言い聞かせながら。


合わせた口から鳴る水音は粘り気を増し、合間に漏れる吐息は熱を籠らせる。
「はぁ……ん……」
時折声が漏れると共に艶のある髪が揺れ、巫女の髪と混ざり合う。
もうすっかり私は情欲を貪るのに夢中になっていた。
衣服に皺が寄るのを気にせず、ひたすら腰を揺すり、衣服の上から全身を刺激させる。
膝の皿が適度に硬く、私の股間を刺激させるのに打ってつけだった。
何度も擦らせて微かに刺激を募らせていき、私の身体は動作と感覚から正常さを失っていく。
視界はぼやけ、巫女の顔にぼんやりと靄がかかってしまった。
身体の動きは散漫になり、今は本能の赴くまま擦り付ける事にのみ意識が注がれる。
舌で何度も巫女の舌をなぞり、なんとも言えない震えが全身を襲う。
「んんぅっ……」
塞がれた口から出るその声は明らかに艶が乗り、今行っている行為を明確に表す。
はあ……身体が熱い。
ただでさえ露出が少ない衣服を着ているだけあって、衣服の内側で熱が籠ってしまう。
胸元のリボンを外し、上着を肌蹴る。
生憎ながらまだ襦袢を着ているので熱は籠ったままだが、これでも大分マシになったと思う。
それに衣服が一つ無くなったことで、刺激も一層強い物になるだろう。


そうして身体を擦り合わせている内に、私の身体を一際強い刺激が貫いた。
「……っんんんぅっ……!」
手足はピンと張り、脳内でばちばちと火花が散る。
そろそろかな。そう思った私は強く唇を合わせ、声を押し殺す。
万が一ということもあるかも知れないし、少しでも心を平常に近づけたかったというのもあったかも知れない。
心に関してはもう手遅れだというのに。
「……んんんんんんんんんんっ……!」
目を強く閉じ、涙を目尻に浮かべる。
全身は強く震え、巫女の身体に何度も打ち付ける。
太腿は強く締まり、巫女の腰を強く締め上げる。
そして、私の股間からは愛液が潮を吹き、襦袢を濡らす。
思考はまっさらになり、その後をふんわりとした感触で満たされていく。


ああ、なんて幸せなんだろう。
そう思いながら、私は意識を手放した。


ぽたっ
水滴の落ちる音で目を覚ました。
「ん……」
瞼を擦りながら両手で地面に手を着き、ゆっくりと身体を起こす。
解けたリボンが垂れ、肌蹴た衣服から私の真っ白な素肌が露わになる。
そして、下に柔らかい感触があったので見下ろすと、上半身を曝け出した霊夢がいる。
霊夢は目を瞑り、静かに寝息をついている。
ああ、そうだった。私は霊夢を洞穴に連れ込み、情事に耽ったんだっけ……。
経緯を思い出すと、途端に気だるさが身体を襲う。
「はぁ……どうしてこんな事を……」
ああやって反省しておきながら、再び関係無き少女を使って事に及んでしまった。
またもや自分の罪深さが嫌になる。自分の胸を抱き、感傷に浸――いやいやいや、私、こんな性格じゃないから。
ため息をつきながら巫女に衣服を着せ、背で抱えて入口付近まで連れていき、壁にもたれかかった状態で座らせる。
異変だと騒がれると面倒だし、問題が拗れそうだったからだ。
霊夢はどうでもよくても、恐らく妖怪側が許さないだろう。
特に霊夢と組んだ妖怪は幻想郷で屈指の権力を持つという。
問題はできるだけ起こさないに限る。


……いや、でも……。
私の思考に不埒な考えがよぎる。
霊夢自体が問題に思わなければ異変になることはない。
それなら、いっそのこと――。











蓮子との秘密基地を築いたあの日以降、私達は洞穴の虜になった。
週末は必ず蓮子と共に洞穴へ赴き、蓮子を壁に背を着かせ、互いの身体を合わせる。
最初は
「まだ確かめたいことがあるから、洞穴に行かない?」
と言って誘ったが、その時に身体を合わせて以降、そんな言葉は必要なくなった。
代わりに彼女にかける言葉は
「洞穴に行って、全てを曝け出しましょう?」
だった。


どうやったら騙されて身体を重ねる破目になった蓮子が虜になるのか。
その経緯を説明するには、洞穴で行う行為に触れる方が早い。
私達は洞穴の奥に着くと、まずは私が奇妙な壁に身体を着ける。
すると様々な情景が浮かび上がってくるの。
それは一度目に見た二人の少女が身体を重ねる情景なんだけど、それの靄は回数を重ねる毎に少しずつ晴れていく。
恐らく何度も身体を重ねて力を向こうの世界に送る事で、より細かい情報を持ってくる事ができるようになったのだと思う。
今では二人の少女は輪郭をはっきりさせた影として見ることができる。
もう少し身体を重ねたら詳細な姿が分かりそうだ。
その時に、私の夢――現実で幻想郷に行くことが叶う。


その為には、蓮子に協力してもらわないといけない。
「ねえ、蓮子。今回も始めましょう?」
蓮子はこくりと頷き、衣服を脱ぎ始めた。
二度目にここに来た時はいきなり襲い、身体を弄りながら全裸に剥いて身体を重ねた。
それは初めて洞穴に来て、突然身体を重ねた時と同じ流れだった。
その二度の経験が脳裏に沁みついてしまったらしく、今では素直に従ってくれる。
まあ、こうした人目もなく、その上仄暗い空間だから脱いでくれるのだとは思うけど。


そうして蓮子は一糸纏わぬ姿になると、私は彼女を背を壁に着かせ、身体を合わせる。
手のひらできめ細かで柔らかな肌の触感を味わいながら、唇を合わせる。
蓮子は瞳を潤ませ、頬を真っ赤に染める。
私もそんな表情になっていると思うが、まあ見えないし後から言われることもないので気にしない。
互いに口から粘っこい水音を鳴らし、時折口を離しては大きく息を吸い込み、再び唇を合わせる。
両手は彼女の腰や胸を優しく撫で、時折胸先の突起を弄る。
その単純な行為の繰り返しではあったが、様子に変化が現れる。
「はぁ……ぁぁん……ん……」
まずは、時折鳴る呼吸音に艶を帯びた声が混ざるようになった。
どちらの口から鳴っているのだろう。責めを受けている蓮子か、はたまた責めを行う事で昂ぶる私か。
それは分からないが、その声はとても色欲に満ちており、平常時には聞けないだろう。
次に、蓮子が腰を壁から浮かせ、私に擦り付けるようになった。
私の責めは強いようで弱い、そんな痒い刺激が彼女の身体にとっては焦らしになっていたのだと思う。
時折胸先を弄る度に彼女は身体を震わせ、くぐもった声を漏らした。
そんな行為の周期を経る毎に彼女は腰を妖しく蠢かせては、私の腰に擦り付ける。
その行為に至るのは私が胸先を弄っていない時に多い。
そうそう、腰の弱い部分を見つけてある。
身体の側面、特にくびれの付近を撫でると、彼女は面白い反応を返す。
「っん……! んん……!」
目を瞑っては艶やかな声を漏らし、短い髪を揺らす。
その後開いた目からは涙が零れ、頬を伝う。
こそばゆいと思う場所と性感帯は同じ場所にあるという俗説を聞いたことがあるが、
彼女の場合その説に当て嵌まるのかな。


そんなこんなで彼女を充分蕩かさせた後、仕上げに入る。
彼女の局部に手を当て、指で陰核を弄ってやる。
充分に濡れたそこは淫靡な水音を鳴らす。
「っんん……! んぅ……」
目を瞑り、艶めかしい声を漏らしては身体を小刻みに揺らす。
そこまで感じていたのなら、早く満足させてあげたほうがいいよね。
陰核を激しく弄り、一気に達させてやる。
「んんぅ……! んっ……んぅぅぅううううううっ……!」
すると蓮子は腰を再び壁から浮かせ、腰に回す手で私の身体を強く抱き締める。
目は強く瞑られ、目尻には涙が溜まる。
余程気持ちよかったのだろう。彼女の満足そうな声がそれを知らせてくれる。


やがて彼女の両手から力が抜けると、彼女は目を力なく開き、私を見つめる。
目は光が灯っておらず、瞼は半分垂れ下がっている。
そんな彼女を見ながら、私は満足するまで唇を着ける。
その時だった、私と彼女の身体から青白い光が発し、後ろの壁へと伝っていく。
今回もこの現象が起こってくれた。毎回発生するその現象は私の能力を証明してくれる。
恐らくだが、絶頂に達した時、心を解放するが故に、壁がその精神を察知して強い感情を向こうの世界に送ってくれるのではないだろうか。
私はメリーと違って精神学を専攻しているので、こうした精神的作用についてはとても詳しい。
それにこれは私の仮説だけでなく、きちんと証拠もある。
なぜなら、青白い光が壁に伝った後、身体を壁に着けると幻想郷の情景を見せてくれるからだ。
私は壁に身体を預け、目を瞑った。
さて、今回はどのような情報を私に授けてくれるのだろう。














白さを曝け出したすすきは風に沿って揺れ、竹林の景色に彩りを与える。
人目を盗んで永遠亭の裏口から出た私は洞穴まで歩き、中に入る。
洞穴に入るのは、もうこれで何度目だろうか。
最初はあの奇妙な壁があるとも思わず、まさか巫女と身体を重ねるとも思わなかった。
もう罪深かろうがなんだろうがいい、私は壁の虜になったに等しい。
「かぐや……また来たのね」
噂をすればなんとやら、後ろから黒い長髪をした巫女が現れた。
最初に洞穴に入り、身体を重ねた後も懲りずに姿を現す。
いや、一つ訂正する必要があるかも知れない。
「この洞穴に入ると気を失い、気がついた頃には洞穴で寝息を立てている……これは小さな異変よ!」
洞穴に入ってからの一連の責めを一切覚えていないらしい。
一度目は強烈な体験だったし仕方ないかと思いもしたが、二度目、三度目と立て続けに起こり
私は目を白黒させた。


一体、あの壁と霊夢――いや、博麗の巫女に何の関係があるのだろう。
一つだけ手がかりがあるとすれば、身体を重ね、達した時に須臾の私が掴む情景だろうか。
二人の少女が身体を重ね、片方の少女が裸身を曝して壁を背にし、もう片方の少女から責めを受け続ける。
最初の頃こそそれらはおぼろげにしか見えなかったが、回数を重ねる毎にそれは鮮明になっていった。
今では二人の服装が何とか識別できる。
二人共幻想郷では見ないような恰好をしており、私達や妖怪のような恰好かと言われると、それとも少し違う。
それが、最近私の中で存在を増す情報だった。
恐らくこの壁は幻想郷と外界を隔てる結界に関係しており、
それが結界を守る役目を持つ霊夢に大きな影響を与えているのかな。
ちなみに、この私の中で存在を増す情報に少し懸念を抱いている。
須臾の私に壁から情報を得させていたが、回数を重ねるごとに情報を掴む私の割合は増えていき
最近は半分以上が情報を掴んで戻ってくる。
この行為を繰り返す度に、私は何のために行い、そして私自身何物なのか分からなくなっていく。
それは、あまりにもその情景に出る少女に思い入れを持ってしまうから。
私は一人の少女――壁に少女を押し付け、身体を弄る方――を気にかけているし、尚且つ身体をも重ねている。
ここまでは壁越しに須臾の私が拾ってくる情景と何ら変わらない。
壁越しに拾ってくるとは言った物の、これが別の少女であるという保証がない。
もしかすると、私は外界でも活動しているのかな……なんてね。
現実と空想が混じり合った妄想に私の脳裏は埋め尽くされる。


ただ一つだけ現実だと言い切れる事は、私は出来事を忘却した巫女を毎回洞穴の奥に連れ込み
奇妙な壁に身体を沿わせ、唇を奪う。これを毎回繰り返しているという事だった。
今日も巫女は私に容易く唇を渡し、舌を絡ませてくる。
「っん……」
互いに舌を絡ませ合い、水音を鳴らしては顔の角度を変え、腔内を隅々まで弄る。
私の腰に手を回され、より強く口づけを求められる。
巫女の舌が私の腔内を弄り、こそばゆさを感じる。
顔は同性同士が口づけを行う背徳感と、口づけ自体の感触という二面により熱くなっていく。
巫女の頬を持ち、より深くへと舌を進ませる。
「……っんぅ……っんん……」
呻き声をあげ頭を振ろうとするが、私に顔を押さえられているので大して動けなかった。
歯茎を舐め、粘り気を増した唾液の味を噛み締めながら腔内を舐めとる。
行為が進む度に巫女は顔を益々赤らめていき、瞳には涙を浮かべる。
腰に回された手に力が入り、強く締め付けられる。
時折漏れる吐息の音がが艶っぽく、かつ熱を帯びている。



唇を離すと、巫女は瞳から光を失い、薄ぼんやりとした眼を私に向け、放心している。
唇の間で引いた糸は顎にかかり、口の端から涎が垂れる。
そろそろ次の段階に行く頃合いかな。
巫女の様子から直感した私は巫女服のような衣服を肌蹴、陰核に手を当てる。
どうやら下着を着けていないらしい。一回目の時は着けていただけに奇妙だった。
まさか普段から着けていないとは思えないし……本当に覚えていないのだろうか。
「んぁ……」
身体を震わせ、口を喘ぐように開いて艶を帯びた声を漏らす。
すっかり惚けた身体は最早反抗の意思を、為すがままに私の責めを受ける。
やはりこの巫女、実は責めを覚えているのではないのかな。
そんな事を思うと、つい責めを強めてしまう。
「んっ……ん……! っぁ……はぁ……あんんんっ……」
強く目を閉じ、堪えきれない刺激を甘い声に変えて吐き出す。
そんな扇情的な姿を、私は淫乱になっていく少女の姿として捉えてしまう。
何も覚えてないのに、どうして洞穴に来る際に下着を履いてこないのだろう。
ありえない、恐らく結界の調整役としての自尊心が邪魔をしていて正直に話せないのではないだろうか。
自ら洞穴に赴き、その上に私のような得体の知れない者に身体を弄られに来る。
そんな行為の虜になった自分を、どうしても認められない。
それは巫女自身はもちろん、傍につく妖怪か、はたまた世界の摂理自体がそう思っているのかも知れない。
ただ一つ言える事としては、今目の前に居る巫女は役割を忘れ、快楽を貪る身へと堕ちているという事だけ。
それ以外は何も断定できない。なぜなら、私は私、目の前の巫女とは違う存在だから。


陰核を手で揉み、巫女の熱い吐息と媚声を何度も吐き出させる。
太腿は何度もぎゅっと絞められ、その度に愛液が手を伝う。
ぬちゃぬちゃとした粘っこい音が鳴り響き、媚声と共鳴して淫靡な空気を作り上げる。
「ぁはぁ……んぁ……あぁんっ……はぁ……はぁっ……」
すっかり陶酔状態となった巫女は、何かを求めるように唇を突き出す。
唇の感触が恋しくなったのだろうか、私は腰に回していた片手で顔を支え、再び口を付けた。
粘っこい音の発生源が一つ加わり、巫女は身体の上下で淫らな音を鳴らす物と化す。
口の中は先ほどより更に熱くなり、私の心まで熱を帯び始める。
巫女は更に状態を深刻な物とし、壁から腰を浮かせては頭を小さく振り、呻くように声を漏らす。
太腿は頻繁に震え、愛液の量も増えている。
そろそろ来るのだろうか。すぐに楽にしてやるために陰核を強く抓む。
「んんぅっ……!」
すると巫女は目を強く瞑り、一際激しい声を漏らしたかと思うと、大きく身体を震わせた。
「んんんんんんんん……! んんんんんんんんんぅぅぅぅっ……!」
巫女の身体から糸が切れたかのように力が抜け、壁にもたれかかる。
深呼吸を行うその吐息は、未だに熱を帯び、粘っこさを残している。


達して壁にもたれかかった巫女の身体と私から青白い光が発する。
その光は巫女の背後にある壁へと伝っている。
例の奇妙な模様――境目の無い虹の模様が彩られた壁だ。
恐らく、この青白い光は半数以上の須臾の私が捉えた物だろう。
今度はどのような景色を見せてくれるのだろうか。
私は壁に身体を着け、耳を当て目を閉じる。


二人の少女が洞穴に入り、奇妙な壁に身体を沿わせた。
いつもの景色だったが、大きな変化点がある。
二人の服装が前よりもはっきりと見え、趣向も分かるようになっていた。
壁を背にした少女は上半身をシャツ、下半身をロングスカートを履いている。
一方もう片方の少女は金髪をしており、紫色のワンピースを着ている。
二人共帽子を被っていて、シャツの少女はつばの付いた黒色の帽子、ワンピースの少女はつばのない帽子を被っている。
このワンピースの少女が、私が親近感を抱く少女の正体だったのか。
見た目的には全く違うし、どちらかといえば巫女の付き添いをしていた妖怪に似ているのだが
心境としては私と同じように感じる。
とても他人事だとは思えないし、外の世界でも私は存在するのでは……という錯覚が錯覚ではないとすら思ってしまう。
そうなると私が求めていたのは目の前で倒れている巫女ではなく、そのワンピースの少女だったのではないだろうか。
すると、私が感情をぶつけるべき相手は、恐らくあの蓬莱人――殺し合いを続けるほどの仲だった少女だろう。
しかし、これだけでは私は何をすればいいのか分からない。まさか殺し合いを続けろと言ってるようには見えないし……。


とにかく、少女の心境が気になる。
今後もこまめに通うようにしよう。
もちろん毎回この巫女も連れてくる、ワンピースの少女が相手している少女に一応姿が似ているしね。
私はそう決心した。

















そんなこんなで巫女と身体を重ね、壁との対話を続けていた私だったが、ついに自分の心と対面することになった。
私の心の変化を見る方法といえば一つしかない。
心を基に身体を作り出した時だ。


それは久々に行った決闘での出来事だった。
互いに用事が忙しく、中々時間取れなかった。
それ故にようやく都合が合い行われた決闘、互いに相手を殺す手に力が入る。
この日の妹紅は一味違った。殺し合いができない苛立ちが彼女の戦略を洗練させたのだろう。
私が想像もしない不意打ちを妹紅はしかけ、巨大な火の玉が直撃。
光の塊と化した私は、安定した足場に身体を落ち着かせて身体を再生させた。
しかし、それを見た妹紅はおどおどし、私が完全に復活しても中々口を開かなかった――
何があったのだろう。そこまで私には話しにくい内容なのだろうか。


「どうしたの。妹紅?」
「か、輝夜……自分の髪を見てみなさいよ」
「自分の髪……って、私はいつものように長髪を――」
そうやって後ろ髪を手に取り、それを視界に入れた時に写ったのは。



艶やかな黒髪ではなく、金髪であった。



「え……」
髪色が変わっている。
顔面蒼白、どうしてこんな事に……。
「復活した時に髪の色が変わるって……輝夜、最近何かあったんじゃ……」
妹紅が私に気をかけてくる。
蓬莱人がリザレクションした際に姿が変わる。これはとても深刻な出来事、何しろ心の深層に持つ自身の像が変わってしまった事を意味するのだから。
現に妹紅は心境の変化と大きな決意によって自らの姿を変えたと過去に聞いている。
心境の変化や大きな決意……そんな事が私に起こる訳が――。
「あ……」
あった。しかも致命的な出来事が。
脳裏に過るは巫女との交わり。
そして、壁……いや、結界の向こうからやってくる少女の意思。
「あった……これだわ……」
感慨深く漏らした私の言葉を、妹紅は更に訊いてくる。
そうだ、あの壁にはもう近寄らないようにしないと……。
私自身が存在できなくなる。そんな気がした。
蓬莱人は身体こそ不死身だが、その根源は心にある。
それが今、侵されている。


これ以上黙っていても袈裟に思われるだけだし、何よりも妹紅に心配される事に何かこみ上げる物を感じた。
私を憎んでいるだけだと思ってたのに、私を気遣う思いやりを向けてくれるなんて……。
話そう。壁に出会ってからの顛末を、全て。
妹紅に聞かれるがままに今まで起こった事を話すと、妹紅は驚き、益々食いついてきて、そして声を荒げた。
そんな事があるのかという気持ちが半分、とても危険な行為をしているという責めの気持ちが半分。
妹紅の表情から察するに、恐らく心情はこのような割合で作られている。
「輝夜、もうその壁には絶対近づかないでよ」
妹紅と別れる前に肩を持たれ、念を強く押された。
大丈夫、私の意思は強いから。
何にしろ永遠の術を使えるんだもの。この決意ぐらい簡単に永遠のものにできるわ。


帰り際、永遠亭へ向かっている最中に例の場所を見つけた。
洞穴――奇妙な壁があり、私の心を惑わす場所だ。
分かっている。私はもう二度と、あそこへは近寄らないと。
妹紅を手放すのは怖いんだもの。それに私は先程心に永遠の術をかけたばかり。
そう簡単に心は引き摺られない。
でも、今は私の傍に霊夢が居ない。
この状態なら壁に触れても問題ないのでは、そう思った私は洞穴へ入った。
「ちょっとだけ……ちょっとだけ……」
自分に言い聞かせるように何度もつぶやく。
ふふ、早速大事な人との約束を破るだなんて、なんて私は罪が深いのでしょう。
いやいや、罪なんてまだ被ってないわ。大丈夫、あの奇妙な壁を見納めるために入るだけだから……。


洞穴に入ると、冷たい空気が私を出迎える。
いつも感じていた親しい空気。
これに二度と触れられなくなるのかと思うと、少し名残惜しい。
そして、霊夢と身体を合わせる事もできなくなると思うと……。
あの交わりはこの壁の能力や洞穴の中という状況があるからできた事。
いわば、あの壁が理性や種族の壁を取っ払ってくれたともいえる。
私はあの壁に能力以外の点でも意味を見出していた。


蝙蝠が羽ばたく音や滴り落ちる水音を聞きながら奥へ進む。
そしていつものように奇妙な模様の壁は佇んでいた。
ああ、この壁と別れないといけないなんて、なんて名残惜しいのだろう。
壁に身体を貼り付かせ、頬で擦る。
洞穴の空気で冷やされた壁の冷たい感触がとても心地いい。


この時、壁が青白く光り、私の身体に光を這わせていた事に、私は気づかなかった。
そして、この時私が感じていた心地よさには、その光による作用が入っていたとは思いもしなかった。


あまりの心地よさに瞼を閉じ、回想をする。
私は金髪の長髪を伸ばし、紫色のワンピースを着ている。
そして壁に茶色の髪をした少女を押し付け、衣服を剥いて身体を合わせる。
どうしてだろう、私はその少女に妹紅に対して抱く感情と同じ物を抱いている。
唇を合わせ、相手の唾液を絡め取っていく。
全ては私が行っている――

いや、それはおかしい、私は私じゃない――

でも今の私は金髪をしているじゃない。立派な私でしょ?――

違う、私の好きな人は妹紅で、茶髪をして……あれ……?――

ほらね、私は私、私の好きな人は茶髪――

そうね、私が好きな人は茶髪、でも黒髪もどうかしら――

いいわね。蓮子もその姿にしましょう。私の想い人は一人、特徴は合わせるべき――

分かった。じゃあ蓮子を黒髪にして――


私と私、巡り巡って互いの意思や記憶が混ざる。
それは溶融した鉄のように、互いの個性が分からなくなっていく。
私と私は、個体の壁を取り払い、同一の存在へと姿を変えていく……。


そう、私は私なの。二つの世界に存在して、互いに同じ想い人を想う――。


場面と視点は目まぐるしく変わる。
周囲は透明で、うっすらと白い空間。
そこに私は放り出され、もう一人の私に押し倒される。
互いに一糸纏わぬ姿であり、押し倒す私は私と同じ姿をしている。
「ふふ、可愛い私。どんな声で鳴くのかしら」
控えめな胸の、その先端に口をつけられ、柔らかな舌で舐められる。
「んん……!」
とてもこそばゆい刺激に目を瞑り、全身を強張らせる。
自分の姿をした者に身体を弄られ、背徳感と奇妙な感触ですぐに身体が昂ぶってしまう。
少しでも気を逸らせば声を出してしまいかねない。
柔らかな舌に何度も刺激され、私の身体を統率する鼓動は乱れ、その影響は呼吸に現れる。
「っは……っはぁっ……っぅあ……はぁ……」
息を吐き出したかと思うとすぐに吸わされ、深く吸い込もうとすると吐き出す。
そんな不規則な呼吸により、私の心も乱れ始める。
「あらあら、私ったらこんな行為にも慣れてないのかしら」
もう一人の私は私の状態を見て煽ってくる。
こんな行為とは言うが失礼だと思う。私は立場上厳粛でいられる事が求められているのだから。
……ん。立場上とは言ったけど、私の立場って何?
「そんな怖い顔してどうしたの? 私は大学生でしょう? 幻想郷では姫君として振舞ってるけど
 本当は自由に行動したい。そう思ってるのよね?」
そうだ、外界では自由気ままな身なのだった。
そりゃもう一人の私に責められても仕方ないよね。どうして身体の一つぐらい重ねた事がないのかと。
「ふふ、ちょうどいいきっかけだし、貴方に本物の快楽を味あわせてあげる
 だって、私だもの、知ってないとおかしいでしょ?」
そんな言葉と共にもう一人の私は股間へ手を伸ばす。
そして陰核の皮を剥き、親指の腹で強く押した。
「んぁぁ……!」
喉の奥から、何とも言い難い声が出た。
全身に経験したことのない震えが走り、思わず太腿を閉じてしまう。
なんなんだろう、この感触
押された指を動かされ、私は未知なる領域を開拓される。
「んっあ……! くぅぅ……っんっ……はっぁぁぁっ……!」
身体を走る悪戯好きな刺激が呼吸に雑音を与え、呼吸機能に発声を強いさせる。
先程の刺激では気付けなかったが、こうして激流として受けると分かる。
これが気持ちいいという感触であることが。


もう一人の私によって、私の身体は甘美な沼に長い間沈められる。
水音を鳴らして陰核を弄られ、尖りを得た乳首をもう一つの手で刺激される。
私は太腿を閉じ、腰をひねって刺激を誤魔化し続けた。
口は陸揚げされた魚のように痙攣し、おかしな声が漏れ続ける。
「さて、そろそろ気持ちよさが分かってもらえたかしら」
「はぁっ……はぁ……ぁん……はぁい……」
もう一人の私は胸から手を離し、だらしなく開いた私の唇に指をひっかける。
自分の身体の制御ができない事を改めて思い知らされ、体温が更に上がってしまう。
腰をもう一人の私に擦り付けるように動かし、蕩けた目で相手を見つめる。
そして自由が効かない口で
「もっとぉ……いじってぇ……」
と言うと、もう一人の私は頷き、陰核に乗せていた手を秘裂へ動かした。
秘裂の淵を指で撫でられ、身体を震わせてしまう。
吐息に熱を籠め、更なる刺激を心身共に待ち望む。
「ここ、すっかり濡れてるわね」
秘裂をなぞった指を目の前に出される。
指は愛液で濡れ、他の指とくっつけて離すと糸を引く。
ああ、私の身体はすっかり駄目になってしまった。
太腿を擦り合わせ、指に吐息をかけながら、熱い視線をもう一人の私に向ける。
「ふふ、そこまでせがまなくたっていいじゃない。せっかちねえ」
そんな言葉を言いながらもう一人の私は愛液に塗れた指を再び秘裂に宛がった。
そして指を立てて少しずつ秘裂に挿し入れていく。
その瞬間、声帯は震え、腰より下は制御が効かなくなる。
「んっあ……! あぁっ……はぁ……あぅんっ……」
ああ、目の前に火花が飛び散る。
全身を何度も何度も甘い蜜が走り、私の神経を焦がしていく。
腰は宙を浮き、美しい金髪は更に散らばる。
「これでこの調子だと、後まで持つのかしらね……」
彼女の呟きに私は反応する知能を持ち合わせていなかった。
その言葉の意味は、そう遠くない内に思い知らされることになる。


挿し入れられた指を秘裂は根元まで飲み込んだ。
「ふふ、もっと面白い物を味あわせてあげる」
そんな言葉と共に指は復路を取る。
つまり、秘裂から挿しぬかれていく。しかも速さは挿れられる時より速い。
「あぁ……んぁ……! あはぁ……! っん……!」
膣壁と指が強く擦り付けられ、全身が大きく浮く。
腰が浮くのは当然として、頭まで浮き、やがては太腿をも立ててしまう。
長い髪は宙に浮き、弧を描く。
そんな事をしている間に指は秘裂から全て抜かれた。
もちろん、これで終わる訳がない。
再び指は秘裂へ侵入していく。


私は、もう一人の私による指での抽送を受け続ける。
吐息は何度も媚声を混じらせ、ふわふわとした空間に吐き出される。
私の身体は魚のように跳ね、膝を立てて快楽を貪る。
髪は身体を跳ねさせる度に何度も宙を舞い、その艶を存分に醸し出す。
視界は潤んで周囲の識別ができなくなり、自我は崩れて溶けてしまいそうだ。
「ふふ、そろそろ達しようね」
もう一人の私は抽送を更に速くし、私の官能を追い立てる。
呼吸の感覚は心音と一致し、声も後からついてくる。
「あっ、はぁっ、あぁんっ、あっ、ぁぁぁ……!」
視界はばちばち色々な色が弾け、全く訳が分からなくなる。
そろそろだろう、腰を宙に浮かせ、目を強く瞑る。
「くぅ……ぅあ……! いく……いくぅ……! んぁああああああああ……!」
何度も手足で宙を掻き、私の身体は力強い何かを求めて強く縮こまる。
秘裂からは強い痺れが走り、何か液体が滲み出ていく。
強く瞑った目からは涙が溢れ、瞼から零れる。


全ての衝動が去り、私は腰を落ち着かせた。
瞼を開き、潤んだ視界を上空へ投げる。
平穏を取り戻そうと呼吸を繰り返し、手足は適当に投げ出した。
その視線に、もう一人の私の顔が映る。
「ふふ、気持ちよかったかしら」
前に差し出されるのは、愛液塗れの指。
「これがあなたの味よ。しっかり味わってね」
指を口に挿し入れられ、舌に絡めさせられる。
ああ、液体はねっとりとしていて、そして甘い。
「っん……ちゅ……ちゅば……」
淫らな水音を口から鳴らし、禁忌の蜜を舐めとる。
私の味……なんておいしく、そして癖になる味なんだろう。
もう自我なんて消し飛ばしてもいい。だって、私は私なんだもの。
焦点は一気にぼやけ、もう一人の私が人の形をしているという事すら分からなくなる。


「ふふ、そんなに惚けちゃって大丈夫?」
もう一人の私は私にのしかかり、陰部を合わせる。
「さあ、私と私は一緒になるのよ」
そして腰を動かし、敏感な箇所を擦り合わせる。
「互いに蕩けて、自我は混ざり合い、そして新たな私になるの」
陰部からは甘美な刺激が生じ、私の自我を溶かす。
「互いの欠点。特徴、観念、全て混ぜて、完全な人間になりましょう?」
もう一人の甘美な囁きが、私の心を抉じ開けようとかかってくる。
耳に息を吹きかけられて思わず身体を震わせ、太腿に力が入る。
「んんっ……っぁ……」
熱を持った身体は更にのぼせ、私から言葉を出す能力を奪う。
私は私に弄られて達してしまうんだ。
そんな事実が私の心を苛み、追い詰められる。
太腿で締め付ける度に華奢な身体の感触を実感し、これが自分の身体だと思うとますます高みから降りられなくなる。
ああ、私……このまま溶けてしまいそう。
「あっ……っはぁ……あぁんんっ……」
蕩けきった声帯を震わせ、もう一人の私の腰に手を回す。
もっと、気持ちよくして。
そして、私と私は一つになるの……。
「ふふ、ますます蕩けた顔になってるわね。それこそが本当の私なの」
蕩けた声をあげながら、私の脳裏のもう一人の私の言葉が入り込む。
本当の……私……。
そんな事、考えた事も無かった。
今こうして責めに走る、あるいは責めを受ける私、これが本当の私なのだろうか。
「そうよ。私達は性欲が人並みにはあるの。抑圧なんてしなくていいのよ」
抑圧……したことなんてあったかな……。
確かに私はもう一人の私程情事には耽ったことがない。
いや、もしかしたらそれの事を言われているのかも知れない。
巫女を押し倒し情事に耽る。これぐらいの頻度が一般的な性欲なのだろうか。
だとすれば今までの私は間違いなく性欲を抑圧していた。
それなら、これからは自分に正直に生きていこう。
飽く程に、周りが呆れるほどに。


陰核から与えられる刺激が溜まり、私の身体は甘い囁きによって支配される。
囁きは各器官を犯し、私を淫靡な生物へと仕立て上げる。
「んっ……さて、そろそろお互いにイきましょうか……っ……」
もう一人の私は目を瞑る。
相手も結構感じていたのかも知れない。私は醜態を曝し続けていたから全く気付かなかった。
「はぁい……わらひ、そろそろイくのぉ……」
まどろんだ思考で何とか言葉を紡ぎ、もう一人の私に意思を知らせる。
とにかく、早く達したい。達して楽になりたいの……。
手足で腰を強く締め付け、快楽の頂を目指す。
視界は真っ白に染まっていき、身体は制御を振り切り収縮を始める。
「はぁ……んぁ……! わらひ、いくぅ……! ふぁあああああああああああん……!」
「わたしも……もぅだめ……んぁああああああああっ……!」
互いに身体を求め、その手で、その足で、相手の身体を捕縛する。
捕縛した先は強く震え、股間からは蜜が止め処なく溢れ出る。
ふわふわとした感触に包まれ、もう一人の私と意識が混ざり合う。
私は私なの……そう、私は何者でもない……。





ぽたっ
頬に水滴が落ち、目を覚ます。
「ん……」
瞼を擦りながら周りを見渡すと、奇妙な色をした例の壁が目の前にあった。
そうか……私は壁に身体を着けた後、私と出会って……。
いや、違う。
私は私を取り戻したの。
ふふ、この事を妹紅に知らせたら、どんな反応をするかな。
次の決闘の機会が楽しみ。これ程待ち焦がれるのは何年ぶりだろう。
よかった。この壁に出会えて本当によかった。
しばらくの間、私は壁に頬を擦り付け感傷に浸った。
時が許すままに、そして、私が私である事を実感し終えるまで……。













そして決闘の機会はやってきた。
丑三つ時――
迷いの竹林は満月に照らされ、竹の葉が白く灯る。
竹に背を預け、この見事な満月を楽しむ。
私は再び妹紅と殺し合う約束をしていた。
胸を抑え、高鳴る呼吸を抑える。
この高鳴りの原因は心に対する焦りか、あるいは期待なのか……。


葉を踏みしめる音が鳴り、銀髪をした少女が姿を現す。
「あら、輝夜の方が先に来ていたんだ」
妹紅だ。彼女は私と同じく、悲しい状態に置かれている。
そろそろ頃合いだろう。
私達は仮染めの関係を捨て、本当の自分を曝け出してもいい段階まで来ている。


「ふふ、たまには満月でも眺めようと思ってね」
心にもない嘘をついて彼女を安心させる。
私にはもう一つ、目的がある。
それを実行できるかと思うと、はやる気持ちを抑えることができなかった。


「そう……まあ、満月なんて拝めない顔にしてやるわ」
妹紅は一歩下がり、片手を地面に着く。
すると銀髪がふわっと宙に浮き、その瞬間に周囲に炎が湧き、彼女を包み込む。
彼女の得意技の一つ――炎を用いた攻撃だ。


「お前には血染めの月がお似合いだよ!」
勢いよく拳を突き出すと、炎はそれに従うかのように一斉に突進する。
炎は竹を飲み込んでいき、瞬く間に灰に変えていく。
その突き進む先は私、このまま喰らえば一溜りもないだろう。
当然だが長年戦ってきた経験を活かし、咄嗟の判断で避ける事もできる。
火鼠の衣だってある。避けずに受け流す事だってできる。
しかし、今の私にそのような行動は意味が無かった。


両手を広げ、大の字になって攻撃を受け止める。
「なっ……!?」
妹紅の驚く顔を最期にして、私の視界は炎に包まれる。
さあ、炎よ。私の身体という名の障壁を焼き尽くして。
そして、本当の私を曝け出させて……。


炎がバチバチと鳴る中、妹紅が口を開いた。
恐らく何か呟いているのだろうけど、私には関係ない。


全身は焼き焦げ、身体は灰となって空気と混ざる。
炎が去った後、私は影も形も無くなっていた。
「……あいつの為にこんな願いをするなんて、私、何やってんだか……それにしても、手ごたえが無さすぎるわ……」
妹紅は焦りを顔に浮かべ、周囲を見渡し警戒する。
蓬莱人は身体を失った時、好きな場所に復活することができる。
この性質を活かし、有利な場所を取るためにわざと攻撃を受ける。
これは、長年続けてきた殺し合いでの常套手段だった。
まあ、今回の私はそれを目的として攻撃を受けた訳ではないんだけど。
さて、ここが復活場所としてよさそうかな。
妹紅の背後で心を落ち着かせ、身体を再構成させる。


背中にピッタリと貼り付く形で光を集め、身体を作り出す。
光は人の形を成し、その輝きは増していく。
そろそろ質量を持つ頃だろう。
動かせるようになった身体を使い、腕を妹紅の首に回す。
思わず振り向いた妹紅だったが、
「なっ……! ま、眩しい……!」
復活中の眩い輝きにより目を閉じる。
さあ、そろそろ本当の私が姿を現す。
妹紅に受け入れてもらえると助かるんだけど。


光は落ち着き、私は身体の再構成を完了させる。
腕を妹紅の首から離し、数歩後ろに下がる。
妹紅に姿を見てもらいたいからだ。
妹紅はゆっくりと瞼を開き、私の姿を確認する。
「……え、ええっ……」
妹紅は言葉を失い、ただただ唖然としている。
まあ、無理はないのかな。
今の私は衣服を和服のような物から、完全に上下一式の和服へと変え、色も桃色から紫色へと変えたのだから。
私は右手でつばのない帽子を押さえ、本当の私になった事を実感する。
これが壁伝いに見た本当の私の姿。
須臾の私は結界を乗り越え、幻想郷の外の世界を見たの。
同性の友人に対して強い恋慕を持ち、少女として永遠に付き合い続けたい。
私は幻想郷だけではなく、外の世界でも同じような気持ちを抱いていた。
もう、どちらがどちらの私か分からない。
ただ分かるのは、どちらも私である。ということだけ。


「か、輝夜……あなた、壁から離れられなかったの……」
壁から離れられなかった?
何を馬鹿な事を言っているのだろう。
私は壁を使い、可能性を試しただけ。
何度もぶつかり、身体を想い人と合わせる。
その強い感情が能力や自我を超えさせ、私と一体化したの。
私は私でしかない。


「さあ……妹紅も……本当の姿を曝け出して……」
怯んで硬直した妹紅に歩み寄る。
彼女も同じく悲しい運命を背負っている。
きっと、この世界で生きている内に本当の自分を忘れ、理想の自分を演じてしまっているのよね。
貴方が忘れていても、私が思い出させてあげる。


妹紅は腰を砕き、その場に尻もちをついた。
「う……うわあああっ……や、やめてっ……」
さて、どうしたら彼女は本当の自分を思い出すだろうか。
外の世界でやっていたように身体を重ねれば思い出すかな?
妹紅を押し倒してもんぺの紐に手をかけて外し、ブラウスのボタンを一つずつ外していく。
外す度に彼女の白い肌が露出する。
「いや……やめてよっ……わたしっ……輝夜以外に見られたくないのにっ……」
輝夜以外に見られたくない?
何を言っているのだろう。私は輝夜なのに……。
ボタンを全て外し終え、ブラウスを肌蹴させる。
胸にはさらしが巻かれているので、強引に外す。
そして、控えめな胸に片手の手のひらを当て、押しつぶすように回す。
「んぁ……やめっ……うっ……」
呻くように声を漏らし、腰をよじる。
眉のしかめ具合から想像するに、快楽ではなく嫌悪感が勝るようだ。
仕方がない、先に気持ちよくなってもらおう。
もんぺに手を挿し入れ、陰核を探る。
その間にも胸を捏ね続け、彼女は何度も腰を宙に浮かせる。
「ひゃぁっ……! やめてよっ……!」
そんな悲鳴を聞き流して探り、ついに陰核を探り当てた。
皮を剥く余裕はないので、軽く押しながら弄る。
「んっ……ぁ! ……いやっ……こんなの……んん……!」
時折甘い声を混じらせ、不規則な吐息を吐き出させる。
陰核を弄る度にその不規則さは増し、ついには声自体が高くなる。
「ぁっ……っあ……ひ……! いやなの……ほんとに……やめっ……っんぁ……!」
時折、彼女の感情が声を押し殺す堤防を超え、その欠片が声と仕草になって表れる。
腰を何度か跳ねさせ、意図してかどうかは分からないが陰核を私の指に擦り付けてくる。
頬は紅く、吐息も荒い。
そこまで卑しい姿を見せるのなら、早く堕ちてしまった方が楽なのに。
まあ、彼女にとっては見たこともない者に犯されてるという感覚だし、仕方ないかな。
私にできることは、早く理性から解放してやる事ぐらいしかない。


陰核を抓み、乳首を指の腹で撫でまわし、耳を舌で舐める。
視覚と聴覚の双方で彼女を責め立てる。
すると、少しずつだが彼女の様子が変わってきた。
「んっ……ぁ……! はぁ……ぁんん……!」
背を震わせ、その度に甘美な声を漏らす。
太腿は何度も快楽を搾り取る為に互いを求め、股は内側に寄せられる。
まだまだ理性の壁は立ったままだが、その節々にひびが入っている。
そろそろだろうか、私は妹紅から手を離し、もんぺを一気にずり降ろした。
下着も着けていたので、それも丁寧に脱がし、片足にかけてやる。
「はぁっ……はぁっ……」
一度責めから解放され、大きく呼吸をする妹紅。
そんな呼吸に浸れるのは今だけ、つかの間の休息を覚えておいてほしい。
なぜなら、今から更に強い責めが襲うのだから。


剥き出しになった股間に手を添える。
そして陰核の皮を剥き、片方の手で太腿を押さえながら弄る。
「んぁ……! あぁっ……っあ……」
腰を浮かせ、先程よりはっきりとした媚声をあげる。
銀髪の髪は毛先で地面を掻き、全体の統率を失っていく。
もっと感じて、そして今の自分を壊すの。
今は丑三つ時で竹林の中、こんな所に人間なんて滅多に訪ねに来ない。
自分の姿を曝け出して、気持ちよさに身体を預けるのにとても適した機会だと思わない?
陰核を指の先で優しく、そして何度も擦る。
「んっああ……! あっぁんっ……! あっはあああっ……!」
ついに妹紅は口を開き、媚声を明確な物にした。
顔はすっかり蕩け、目尻には涙が伝う。
頭を何度も振り、前髪は額に貼り付く。
彼女は全身から桃色の雰囲気を醸し出している。
陰核は愛液ですっかり滑りを得て、擦る指の速度を手助けする。
そろそろだろうか、粘っこい水音を更に大きくして、私は妹紅を追い詰める。
「ひゃぁ……! んっくはぁぁっっ……! あっ、やぁ……っひ……!」
驚きを混じらせた声をあげ、いよいよ彼女は背を反らし、声を飲んだ。
そろそろだ、陰核を弄る指を立て、一際大きな刺激を与える。
「んっ、く、ふぁあああああああああっ……!」
彼女は何度も背を地面に叩きつけ、髪の毛を振り乱し、達した。
今だ、私はその瞬間に彼女の首に手をかけ、須臾に力を込めて首を折る。
トンネル効果を与えるには、形を成していない概念にぶつけるのが最も効率がいい。


首が折れる音がした後、彼女の身体が仄白く光りながら消滅し、人の形をした光が現れた。
これが妹紅の魂だろう。私は須臾の世界を展開し、魂を捕える。
須臾の時間でも魂は逃げることができるが、無数の私で捉えればどうだろうか。
それだけ捕えられる確率は上がる。


数人の須臾の私が魂を捕まえた。
それぞれの私が協力して拘束している。
ふふ、この勝負、私の作戦勝ちね。


ここまで来たらやる事は一つ。
妹紅の魂に、私の経験と思い出、そして概念を当て続けるだけ。
無数の私が彼女に干渉するんだ。成功率はほぼ100%に近いはず。


魂の頭部を手で擦りながら、私は脳裏にイメージを浮かべる。
それは外界で見せる本来の彼女の姿。
そんな姿を想像しながら擦り、彼女の心を解きほぐす。
全ては彼女のため、そして私のため。
そうだ、心を揺さぶるには刺激を与える方が効率的かもしれない。
意識を集中させ、無数の私で魂を囲み、人型の胸部や股間に当たる箇所を弄る。


魂である光の塊は悶えながら背を反らし、私達から逃げようともがく。
そう簡単に逃がすものですか、本当のあなたを思い出すまでは離さないんだから。
拘束した状態で何度も弄り、魂は声無き叫びをあげ続ける。
やがて魂の反応が鈍くなったかと思うと、輝きが少しずつ弱くなっていく。
そろそろ身体の再構成が終わる頃だろう。
須臾の私を引っ込め、ただただ抱き付いて見守った。


輝きを無くした時、そこには生まれ変わった妹紅の姿があった。
光を跳ね返す銀髪は、光を艶として表す黒髪に変化した。
そしてシャツともんぺという動きやすさを重視した服装は一転し
真っ白なシャツの上から袖がついた茶色の上着を羽織り、下半身を茶色のロングスカートで包んでいる。
フリルで装飾されたその恰好は、彼女自身の可愛らしさを存分に発揮しているし
それでいて、全体的な雰囲気はあの巫女に似ている所がある。
そして頭には、つばのついた帽子を被っている。


これこそ私が求めた、彼女の本当の姿。
妹紅は薄らと瞼を開け、小さく口を開く。
「ぅん……ここは……?」
場所が分からなくなったらしい。目を周囲に向け、場所を確認しようとする。
私が強い想像を流し込んだものだから、そのせいで記憶が混乱しているのかも知れない。
私は彼女の口に口を合わせ、胸や秘部を擦る。
「っんん……んぅ……ん……」
手が腰に回され、脚や手に震えが走る。
静寂が包む竹林に粘っこい水音と微かな媚声が響き渡った。
私の責めが生まれたての身体に悦びの涙を流させる。
私は私、そして彼女は彼女。
世界を隔てても自分は自分なの。これは当然の事でしょ?






















最近、メリーの様子がおかしい。
大学をよく休むようになり、たまに姿を現す度に服装の嗜好が変わっていく。
飾り気のないワンピースと帽子を好んでいたのに、少しずつフリルや袖が長い服を好むようになり
最近では和服と見間違えるような振袖がある服を着て大学に出てきた。
そういえば、最近髪の毛も伸びてきている。
美しさを持ったままではあるんだけど、最後に見た時には毛先が腰付近にあった。
どこまで伸ばすつもりなんだろう。生活に支障は出ないのかな。
正直な話、彼女が不安だ。
初めて奇妙な壁まで行った時に、トンネル効果なんて言って可能性を試させない方がよかったかも知れない。
メリーが幻想郷に力を与えようとした時、同様に幻想郷からも影響を受けてしまった可能性があるのだから……。












「くしゅんっ!」
くしゃみが出た。
もしかしたら誰かが私の噂をしていたり、なんてね。
さすがに古典的すぎる発想を除け、私は服を選んでいた。


私は壁に触れてからというものの、幻想の存在に魅了されていった。
幻想の中で身体を重ねる二人の少女――かぐや姫と巫女の内、かぐや姫にとても関心が湧いた。
彼女は私と同じく同性の少女に関心を寄せており、少し間違えば恋と見分けがつかない思いを抱えている。
それが私の心境と一致しており、親近感では表しきれない思いを抱いている。
さて、こうして憧れの人ができてしまった人間が取る行為は多数ある。
私はその中から同一化、つまり、かぐや姫自身になりきる事を選んだ。


かぐや姫、私が日本に来たばかりの頃に読んで憧れを抱いた存在だ。
その頃は所詮空想だし……と諦めもしたのだが、今考えると私の美貌では敵いっこないという逃げだったのかも知れない。
しかし、今は違う。例え敵わなくてもできる限り近づくことはできる。
そうと決まれば衣装探しだ。
さまざまな服屋に通い、かぐや姫らしい女性の美しさと冷静さを兼ね備えた服を探し回る。
そうして少しずつそれらを増した服装を着こなし、私自身の美しさを引き出す工夫をしていき。
そして美貌を求める意欲を引き出させる。


そうだ、髪も伸ばそう。
かぐや姫は足元まで伸びる美しい髪がとても魅力的だった。
彼女は黒髪だったが、私は黒髪ではない。
今更黒く染めても彼女には勝てないので、地毛をそのままに長く伸ばす事にした。
見た目を再現するのではなく美しい姿を作る方が、よりかぐや姫に近づける。
私はそう思っている。


そして数日後――
「これでいいかな」
私は姿見の前に立ち、自分の姿を確かめる。
思い切って仕立て屋に和服を特注し、作ってもらった。
京都には仕立て屋がたくさんあるが、その中でも人間国宝の技術を受け継いだ老舗に頼んだ。
とても大きな出費だったが、蓮子に見せる為、そして、自分が幻想の人間になるためと思えば全く惜しくない。
紫色の和服が私の身体の線を浮かび上がらせ、大きな振袖が奥ゆかしさを醸し出す。
長い髪の毛は床まで伸び、美しい艶が浮かび上がる。
「ぁ……」
あまりの出来に私は見惚れ、頭に乗せたいつもの帽子を押さえる。
これが、私なのだろうか。
本来の私の姿に貴族を惑わす美女らしい雰囲気が備わり、自分でも見惚れてしまう。


こんなに美しくなった私を見て、きっと蓮子も喜んでくれるだろう。
もちろん蓮子の分も用意してある。サイズは調べられないのでゆとりのある衣装を発注した。
あわよくば蓮子にも女性らしく着飾る事の楽しさを知ってもらいたい。
絶対に蓮子に似合うはずだから。
その事は壁越しに見た情景が保障するわ。


そう思いながら、私は大学へ向かう。
手には紙袋を、そしてもう片方の手には鞄を持つ。
この鞄は山に入った時に蓮子が持っていた物とお揃いの鞄で、私がいつも使っている物よりも一回り大きい。
憧れの意味もあるけど、とある物を入れるためにどうしても必要な大きさだった。まあ、できれば使いたくないし、脅しにしか使わないと思うけど。
この和服、袖が少し長すぎたかなと思ったりもしたけど、そんな事あまり気にしなくてもいいよね。
だってこの見た目は手放せないもの。
蓮子は生まれ変わった私を見て、どんな反応を返すのだろう。
ああ、私の憧れであり、且つ思い人でもあるんだもの。きっと喜んでくれるよね。
期待感が背中を押し、歩みを速める。
着慣れない着物で戸惑いがちだった足取りが相殺され、いつもの調子で歩く事ができる。
この調子ならいつも通りの時間に着きそうだ。


そして大学に着いた。
時刻は既に昼前、午前の授業が終わり、生徒は皆昼食を取ろうと各地へ散らばっていく。
学園祭の開催を間近に控え、生徒だけでなく教師や事務員も準備に駆り出され、大学全体が学園祭一色に染まっている。
ついに私達は出し物を用意する事ができなかったが、別にそんなのどうてもよくなっていた。
だって、私は大きな気づきを得ることができたし、蓮子だってそれを得る予定だもの。


広大なキャンパスを歩き、私達のサークル――秘封倶楽部の部屋の前に着く。
蓮子はこの曜日の午後に講義を受講していない。
私と蓮子は受講している講義の情報を共有し、困った講義があれば互いに助け合ってきた。
なので私が彼女の受講情報を知っているのは当然のこと。
……もしかしたら、蓮子は私が最近講義に出てないの不安に思ってたりするかな。
まあいいや、今から安心させてあげるのだし。
扉に手をかけ、一気に開く。


部屋の中は相変わらず雑多な雰囲気を放っている。
郷土史を納めた本が棚に収納され、ペナントが壁にかけられている。
あまりにも古すぎるお土産は私の趣味によるもの。
最近の世界が近代化が進みすぎたので、こうして古き良き時代の空気が残った物を集めて、雰囲気を味わっている。
それに、こうした物を集めておくと、いつか夢以外で幻想郷に入れるのではないかという願掛けの意味もあった。
今、私はこのような状態になる事ができたが、その土産の効力かどうかは私には分からない。


「あ、メリー……久しぶりだね」
蓮子は窓際に椅子を置き、腰かけて本を読んでいた。
私が入ってきたのに気付くと本を閉じ、私を見つめる。
蓮子に何も言わずに姿を消したので、彼女には相当迷惑をかけたと思う。
「そ、その服……どうしたの……? とても高そう……」
彼女の目は鋭い。
あまり服装には気を遣っているようには思えなかったが、そうした感性は持っているんだ。
だったら、私の提案も喜んで受け入れてくれるよね?
「ああ、これね……本当の私になるために発注したの」
「本当の……私……?」
蓮子は目を白黒させ、硬直した。
はぁ……さすがに素直には喜んでくれないか。
そりゃそうなるよね。久々に姿を現したかと思うと、こんな事をのたまうんだもの。
傍から見れば新興の宗教にでも嵌ったと思われても仕方ない。
でも違うの。これは私が持ち帰ってきた幻想郷の欠片なの。


「ねえ、かぐや姫って知ってるよね?」
「うん、子供の頃読んだことあるし、それに学校でも習ったからね。メリーが知ってるとは思わなかったけど」
へえ、日本だと授業で習うんだ。
さすが発祥の地なだけあるよね。
「私、幻想郷の中を見て分かったことがあるの」
蓮子は俯き、つばを下げて顔を隠す。
何度も壁に蓮子を押し付け弄った記憶を思い出してるのかな。
「幻想郷では、私、かぐや姫になってるのよ」
「ど……どういう事……なの……?」
私の言葉に蓮子は言葉を詰まらせる。
「永遠亭っていう竹林の深くに隠居している屋敷に住んでいて、時折不死者と決闘して遊ぶの」
「メ、メリー……? それは危なすぎるよ……」
「大丈夫、私もその世界だと不死身だから」
「い、意味が全く分からないよ……」
蓮子は言葉を濁らせる。
私が捲し立てるように次から次へと情報を与えるから混乱しているみたい。
「でね、蓮子、あなたは幻想郷だとその不死者になってるのよ」
「い……いや……どういう事なのかさっぱり……」
「ふふ、そう言うと思ってた。本当のあなたを思い出すために用意してきたのよ」
紙袋に手を入れ、服を取り出す。
袖が付いた服で、髪飾りも付いているとても女の子らしい服だ。
蓮子がいつも着ている服とは大きくイメージが異なる。
蓮子ににじり寄り、服を目の前で開いて全貌を露わにさせる。
その華美なデザインと上質な布が放つ艶に、蓮子は唖然としている。
そこまで反応に困る物なのかな? さすがにここまで上質な衣服をあげると素直に喜んでくれると思ったのだけど。
「蓮子もこの服を着れば本当のあなたを思い出すし、やるべき事も分かるわ」
「え……ちょっとそれは……メリー……? あなた、一度休んだ方が……っん……!?」
蓮子に迫り、唇を合わせた。
柔らかい唇の感触が伝わってくる。
こうなったら彼女の本能を呼び出し、直接思い出させてあげる。
蓮子の背には大きな窓がある。幸いなことにここは5階、他の校舎から見ようとしない限りは見えないはず。
それにここは他の校舎より離れた場所に立っている。見えたとしてもとても小さいだろう。
ここは大学だし法律上は公共物だけど、そんな事気にせずに淫事に耽ろう。
衣服を脇の机の上に置いてから手を胸に持っていき、もう片方の手をスカートの腰から挿し入れる。
さて、どこまで持つかな。


腰に手を挿し入れた私は股間へと手を伸ばし、下着越しに陰核を弄る。
「んんぅ……!」
蓮子は驚き、手足を暴れさせる。
当然よね。だって私達、今までに大学で行為に及んだ事はないもの。
私達しか居ない場とはいえ、あくまで公衆の場で身体を重ねられるという非常事態に
蓮子は足を上げ、私の身体を離そうとするが、そんな抵抗大した事なかった。
だって壁が後ろにあるんだもの。足なんてあまり上げられないよね?
「んっ……んぅ……んんっ……」
そうして責めを続けていると、蓮子の瞼が垂れ下がり、声に艶が籠るようになった。
時折胸先を強く擦ると全身を震わせ、陰核を愛液で濡らす。
そこまで感じてくれるのなら、文句の一つも言えないよね。
蓮子の唇から口を離し、唾液の橋を作る。
「っはぁ……はぁっ……メリぃ……もぅ、やめて……」
ぼーっとした眼差しを私に向けながら蓮子は意思を見せる。
ここまで責めておいて本当にやめたら、きっとまともに帰路につくことなんてできないよね?
一度この情事を始めた以上、私は最後まで行う義務がある。
シャツのボタンに手をかけ、一つずつ外していく。
シャツが肌蹴、蓮子の素肌が徐々に露わになる。
蓮子は顔を真っ赤にして頭を振るが、そんな様子にはかまわない。
そうしてシャツを全て外した後、下着のフックに手をかけて下着も外してしまう。
露わになった上半身は全体的に白く、控えめな胸にある尖った先端が目立つ。
やっぱり感じていてくれてたんだ。胸先を片手で押し潰しながら、下半身の着衣に手をかける。
「んっ……いやっ……あぁ……」
蓮子は腰を浮かせ、頭を振り乱す。
その仕草からは背徳感と危機感の双方が感じられる。余程他人に感づかれたくないのだろうか。
別に心配しなくてもいいじゃない。このサークルには私達二人しか所属していないし、誰も入部してこないというのに。
跳ねさせる太腿を介して下着を脱がせ、スカートもフックを外して脱がせると
目の前には帽子のみを被った一糸纏わぬ女子大生ができあがった。


もう子供を抜け出した年齢なのに、公衆の場所で全裸を曝す。
まさか自分がそんな事を行う破目になるとは思わなかっただろう。
目の前の彼女は吐息を荒げ、全身を真っ赤に染める。
「はぁっ……はぁ……いや……ぅんっ……」
洞穴での情事が身体に沁みついているのか、勝手に身体は発情し、股間からは愛液が垂れる。
彼女の心と体は、知らず知らずの内に淫蕩な気質を得ている。
その事実に気付いているのかどうかは分からないが、彼女は頭を振り続ける。
そこまで嫌がらなくてもいいのに……気持ちいい事はいいことでしょう?
達した時に思考から完全に解放された時、人は本当の姿を思い出すの。
だから、あの壁で私達が身体を重ねた時に、私は壁の向こう側を見る事ができたの。
その瞬間だけ、頭は思考や現世の常識から解放されるの。
だから、その事を彼女にも気付いてほしい。
彼女の耳に吐息を吹きかけながら左手で腰を擦り、右手で胸を軽く揉む。
「んひゃ……ぁん……はぁ……んん……」
身体を小刻みに震わせ、頭を振っては私の吐息から耳を守ろうと努力する。
彼女が横を向く度に吐息は窓に当たり、秋と冬の境目で冷えかけの窓を曇らせる。
彼女は口を尖らせ、何度も吐息と媚声を吐き出させる。
さて、そろそろ彼女を常識から解放させようかな。
左手を腰から下ろし、陰部を狙う。
彼女の視界は最早蕩けて霧に埋もれてしまい、そんな私の指の動きに気付けない。
その行為を知るのは、次に彼女が大きな声をあげる時だった。
「っんひゃぁ……! あぁっ……っんく……っんん……!」
私はその時、秘裂に指を添え、人差し指を軽く挿し入れていた。
彼女は腰を跳ねさせ、窓の前にある棚に腰を打ち付ける。
そこまで驚くような刺激だったのかな。
陰核と大して変わらない刺激だと思うのだけど。
だって私、この衣装を作るために男性としたけどほとんど同じような刺激だったよ?
まあ、もしかすると初めてだったからかも知れないし、様子を見て続けようかな。


秘裂に何度も指を飲み込ませて彼女の身体を悦ばせると、次第に様子が変わってきた。
「あっ……ん……! ぁはぁ……んん……!」
目を強く瞑り、艶塗れの声を吐き出させる。
口は陸に打ち上げられた魚のように開き、熱い吐息が私の顔に当たる。
秘裂は愛液を滲ませ、彼女の声と混ざり淫靡な空間を作り上げる。
まさか、この由緒正しき地域にある大学でこんな秘め事が行われているとは誰も思わないはず。
私だって何も知らなければ思わないし、彼女だって思わないはず。
いや、そもそも彼女は今こうして責めを受けている事自体とても恥ずかしく思っているだろう。
現に彼女の身体はとても火照り、頬は真っ赤に染まっているのだから。
まあ、その内忘れると思うけれどね。
秘裂への抽送を続けながら耳元で囁く。
「どう? 気持ちいい?」
彼女は淫らな声と吐息を吐き出すのみで、返事を返そうとする意思すら見当たらない。
私の声が聞こえないのかな。あるいは、まだ理性が残っている?
だったら理性を潰してあげないといけないよね。抽送を更に早め、胸先を強く押しつぶした。
すると彼女は腰を大きく跳ね、あられのない声を吐き出す。
「んひゃぁ……! あああっ……っひ……!」
そして身体は痙攣を始め、瞼を閉じて手足の指を丸める。
あ、これはやりすぎたかも知れない。
「っひ……ん……あああああああああっ……」
股間からは愛液が吹き出し、私の指を濡らす。
愛液は太腿を伝い、一部は床を直接濡らす。
激流が過ぎ去ったのだろうか、蓮子は手足の指から力を抜き、瞼を力無く半分開く。
「駄目じゃない。サークルの部屋とはいえここは大学なのよ?」
愛液で濡れた指を蓮子の前に差し出し、指をひっつけては離して愛液で糸を引かせる。
昼間の大学で淫靡な行為に耽り、しかも達した。
その事実を嫌でも突きつけられた蓮子は、静かに頭を振り続ける。
一つは私のせいでないという責任逃れのため、そしてもう一つは、自身の身体に対する否定として。


さて、私の目的は蓮子を達させる事ではない。
胸に当てた手で再び責めを再開する。
達したばかりの身体にとって毒にならない程度の快楽で、ゆっくりと、じわりと追い詰める。
「んっ……っぁ……」
蓮子は腰を妖しく蠢かせ、身体に再び染み込んでいく快楽を紛らせようとする。
「さて、蓮子」
愛液塗れの指を開きっぱなしの唇に当て、ゆっくりとなぞりながら聞く。
真っ赤に火照った唇に愛体が塗られ、仄かにてかりを得る。
顔を近づけ、吐息に熱を籠らせて次の言葉を囁く。
「貴方には二つの選択肢が与えられているわ」
胸を軽く揉み、熱い吐息を吐き出すきっかけを与える。
「一つ目は、私が持ってきた服を着て、振る舞いも変える事」
蓮子は身体を震わせ、窓際の髪を揺らす。
「そして二つ目は、このまま責めを受け続けるか」
蓮子は目を曇らせ熱い吐息を吐きながら、視線を机に向ける。
机の上には私が持ってきた服の他にもう一つ、蓮子が着ていた服が散らかっている。
ああ、そうか。これも選択肢だと考えているんだ。私は蓮子の足元にあるスカートに目を向ける。
蓮子自身の愛液ですっかり濡れ、そのまま着る事はできそうにない。
「あら、この部屋を元の服を着て出る事はできないわ」
胸から手を離して蓮子のシャツを手に取り、秘裂を擦る。
蓮子は腰を震わせ、秘裂から新たに愛液を染み出させる。
それはシャツに伝い、白かったシャツに妖しい艶ができる。
私はそれを数度繰り返し、蓮子のシャツを自身の愛液で塗りたくった。
「ぁっ……ん……っは……ぁ……」
痴れた吐息を吐き出し、腰を妖しく蠢かせる。
シャツが愛液に濡れる過程は水音となって、この部屋を満たす。
そして何度もシャツで愛液を拭った後、私はシャツを股間から離し、蓮子の前に差し出す。
シャツは窓から注ぐ日光により、妖しい艶を返す。
「ほら、これでスカートだけでなくシャツまで濡れたわ」
蓮子は私に視線を強く向ける。
目尻に若干力が入っていることから、恐らく私は睨まれているのだろう。
それも無理はない。だけどそうなったのは蓮子の身体のせいなのよ?
あまり私を責めないでほしいな。
「これだけ濡れたら、今日はもう着れないでしょ?」
そんな蓮子の態度にも怯まず言葉を続ける。
蓮子の鼻にシャツを押し付け、匂いを嗅がせてやる。
すると蓮子はくぐもった声を漏らして腰を揺らし始めた。
嫌なのか、それとも反射的に行動してしまったのか分からない。
一つだけ言えることは、彼女の理性は大分本能に押されているということだけ。
「まさか泊まる訳にもいかないし、どうしても服を着たくないのなら……」
この大学では退出時間を超えると、警備員がキャンパス内の各建物を巡回する。
それは学園祭を控えた日程でも例外ではない。
どうしても退出時間以降も作業したいのなら申請を出すか、あるいは他の場所で続けるしかない。
私は鞄から一枚の大きな布を取り出した。
それはカーテンの布で、白く透けている。恐らく裸身の上から着ると局部の様子が透けて見えてしまうだろう。
「これを着て外に出るしかないね。まあ、その後どうなっても私は知らないけど」
さすがにこんな恰好で外に出ると、周囲の人々の目は避けられない。
それは大抵不審な目だろうけど、中には好奇な目で見る人だって出る。
人が多い商業地区なら大丈夫だろうけど、人通りの少ない場所や夜間になると全く保証はできない。


蓮子の顔からシャツを離し、再び聞く。
「さて、どちらの選択肢を選ぶのかしら?」
私の問いに対し、蓮子は
「ぃや……っん……ゃ……」
と小声を漏らして頭を振り続ける。
全く、これでは埒が開かないじゃない。
胸に手を当て、もう片方の手を股間に当てる。
そして軽く胸を揉みしだき、その一方で秘裂に指を挿し入れる。
「んぅっ……あ……ひゃううううっ……」
蓮子は蕩けた声をあげ、腰を大きく跳ねさせる。
身体は後ろに反れて窓に強く打ち付ける。
一度理性を奪えば、また冷静になって考えられるかな。
秘裂は水音を立てて指を飲み込み、蓮子の官能を更に高めていく。
「あっ……は……あぅぅんっ……ぁんんっ……」
太腿で私の手を挟み、手を逃げられなくする。
手をこれ以上入れられたくなかったのだろうか。
しかし、その行為は逆に手を退くことができなくなっただけで、全く抑止力にならない。
心の中で蓮子の痴態を嘲笑いながら、私は乳首を強く押し潰し、秘裂の抽送を一気に早める。
「あっ……はぅぅんっ……いく……イくのぉ……あぅうううううううんっ……」
ついに耐え切れなくなった蓮子は身体を大きく痙攣させて達した。
秘裂からは愛液が大量に分泌され、私の手を濡らす。
愛液は床にまで垂れ、蓮子のスカートを更に汚す。
絶頂の波から解放された蓮子は、大きく深呼吸をして身体の調子を整えようとする。
私は顎を持ち、もう一度問いかける。
「ねえ、蓮子、あなたはどちらを選ぶの?」












日が暮れて、辺りは暗闇に包まれた。
学園祭の準備を進めていた生徒の大半は帰り、残るのは私達のような変わり者だけ。
「んぁ……ぁあんっ……」
蓮子は相変わらず腰を揺らし、私の腰に手を回して快楽をせがむ。
あの時蓮子は選択を決め兼ね、再び私の責めを受ける破目となった。
それが二度三度と続き……今では数を数えきれない程だ。
ただ一つだけ言える事としては、今の彼女は責めに悦びを感じていることだった。
「あっ……やぁ……あぁああんっ……きもちいいよぉ……もっとぉ……」
心も身体も蕩けてしまった蓮子は、私に口づけを迫る。
参ったわね。そろそろ警備員が来る時間なんだけど……。


その時だった、こつこつという足音が私達の部屋に近づいてくる。
これは警備員の足音だろう。
あの時は布でも着ろと言ったが、さすがに蕩けて自己判断ができなくなった蓮子にそれはできなさそうだ。
私は急いで作ってきた衣服を蓮子に被せ、少しずつ着せていく。


「君たち! 何をしている? もう閉館時間だぞ!」
そして蓮子に衣服を全て着せ終えたと同時に扉が開き、警備員の声が飛ぶ。
危なかった。これで蓮子が服を着ていなかったらどうなっていた事か。
「わ、私達! 学園祭の準備をしていたんです!」
私は必死に声を荒げ、この時間になってしまった理由を弁明する。
一応嘘はついていない。まあ、内容に少し嘘はあるのだけど。
その嘘は蓮子の様子を見ればばれてしまいそうだ。
蓮子は未だに頬を紅くし、甘美な刺激の余韻によって腰を揺すり続けている。
「傍に居る君、本当なのか?」
警備員が蓮子に声をかけた。
蓮子は少し身体を揺らした後、喘ぐように呼吸を繰り返す口からゆっくりと言葉を吐き出した。
「はぁっ……はぁっ……はぁ……は、はぃ……わ、わたひたち……劇の練習を、していたんですぅ……」
何度も頭を俯きながら紡がれた言葉を聞いて、警備員はどこか納得がいかなさそうな表情を浮かべて
「そうか……それなら早く帰る準備をするように」
と言い、扉を閉めた。
よかった。とりあえずこれで一難は去った。
蓮子の方に振り向くと、頬を赤らめ、今にも喘ぎ声が出そうな口の開き方をしている。
巫女服に似た華美な服はいつもと違う一面を見せ、私の心を揺さぶる。
そう、これが私が壁の向こうに見た少女の姿。
「はぁっ……はぁっ……からだが……あついぃ……」
甘美な刺激を身体に遺された蓮子は、それを少しでも紛らわす為に腰を私に擦り付けてくる。
そうね、このまま帰らせるのは可哀想よね。それに夜も遅いから誰に襲われるか分かった物ではないし。
洗面台まで蓮子を連れていき、蓮子を鏡と向かい合わせるようにして立ち、互いに身体を抱いた。
そしてゆっくりと口を合わせ、舌を突き入れる。
「んっ……ちゅ……っん……」
どちらのか分からないくぐもった声が漏れ、水音がその間を埋める。
私は蓮子の目に触れ、私が幾度となく見てきた物を共有させる。
蓮子は蕩けた目を鏡に向け、自分の華美な袖や髪飾りを私が見せる幻像に出る少女と重ね合わせ、それらで複合したイメージを脳裏に焼き付ける。
互いに太腿を絡ませ、更に舌を深くへと突き入れ、腔内を舐めとっていく。
ふふ、最後の仕上げとして、蓮子の"役作り"を終わらせないとね。
この役作りは、蓮子に私の視界を完全に共有させ、心に焼き付ける事でようやく完成するの。














劇とは、演者が役割を演じる場のこと。
演者は日常と劇、それぞれの人格の間に壁を作る。
演者は定められた役割に沿って人格を作り、劇での役割を終えると、演者は日常に戻る。
しかし、もし劇の役割が永久に続き、完結が無い場合、演者はどうなるのだろう。
それは最早劇とは呼ばれず、日常と同化してしまう。
私と蓮子にとって、学園祭への出し物なんてものは最早必要なかった。
私は日常を見せるだけでいいし、蓮子は新たな日常を始めるだけ。
ただそれだけの事。だから出し物といった非日常的な物は必要ない。
簡単な事でしょう?















――迷いの竹林
私は親友との待ち合わせの場所へ駆けている。
長い和服の裾を持ち上げ、時折足袋と下駄を覗かせながら竹林の藪を踏みしめる。
親友は、ようやく本当の自分を取り戻すことができた。
それがとても嬉しかった。


待ち合わせの場所についた。
満月を見つめ、ぼーっと空想する。
人の業から離れた私達は外界では大学に通い、同じサークルに入っているらしい。
洞穴にある奇妙な壁に身体を預けると、そんな私達の活動を覗き見る事ができる。
私達蓬莱人の本体は身体ではなく、心にある。
その心は壁を介して結界を超え、外の世界にまで滲みだした。
その結果、私達は外界で人間らしい生活を営めるという夢を叶えたのだろう。


そうして空想に耽っていると、向こう側から足音が聞こえてきた。
彼女は茶髪だった髪を黒く染め、腰付近まで伸ばしている。
かつて着ていたブラウスとロングスカートという服装は、今はフリルと袖が付いている。
一見すると結界を守る巫女と恰好が似ている。


私達には幻想郷の外では別の名前があるんだけど、郷に入っては郷に従えという言葉がある。
私は幻想郷での名前で彼女を呼ぶ。


「こんばんは。妹紅」
強烈なイメージと強い憧れは、時として自分を見失うことになる
だがそれは、もしかすると新たな人生の始まりかも知れない。

とにかく、壁にぶち当たったらぶつかってみましょう
toroiya
作品情報
作品集:
最新
投稿日時:
2014/06/07 23:11:10
更新日時:
2014/06/07 23:11:10
評価:
3/3
POINT:
19
Rate:
2.20
1. 7 リラクシ ■2014/06/18 22:35:01
読んでいて「んんんん…!?」となりました。いやぁ奇々怪々な物語、面白かったです。
トンネル効果と蓬莱人のあり方を重ねた解釈が素晴らしいの一言。存外、我々が住んでいる三次元と言う壁の外に、知らぬ間にトンネル効果で干渉しているかもしれませんねぇ。
メリー視点と輝夜視点の二つの視点で二度おいしい!エロエロを堪能させて頂きました。
惜しむらくは(私の頭が弱いのがいけない所為もあるのでしょうが)状況描写や背景などがいまいち理解できない部分が目立ち、読んでいてスクロールが止まってしまう場面が多々ありました。
これについては一人称であるために説明口調を避けた結果なのかもしれないのでしょうが、物語にのめり込めず、一歩引いて俯瞰する立場になってしまったのが読了後に悔やまれました。
とは言え少々のことなど物ともさせない魅力的な構成でした。そしてエロかったです。
とても楽しめました。
2. 8 グランドトライン ■2014/06/19 12:05:15
トンネルは貫通し、憧れの壁は無くなり、全ては一つに混ざり合った……か。

メリーと輝夜、2人の主人公の視点で描かれる物語は奇妙で趣が深く感じます。
ネチョシーンも豊富で、かつ描写も詳しいため、なかなか読みごたえがあります。

ただ、何度も繰り返すシーンの関係か、似たようなネチョシーンが多く感じられる…ような気がします。
あとラストシーンがどんな状況か少し分かり辛いです。
まあ、壁が無くなり、世界が混ざっているので仕方ない気がしますが。
それと誤字を一か所発見しました。

私はメリーと違って精神学を専攻しているので、
>私は蓮子と違って精神学を専攻しているので、

しかし段々狂っていっての衝撃の結末といい、メリーと輝夜の組み合わせといい、なかなか斬新な物語には感心させられます。
ところどころで出てくる科学の解説もいい味出してました。

それはそうとボーイッシュな感じに反して蓮子が一番エロい!
3. 4 ぱ。 ■2014/06/22 19:55:54
力作。秘封ネタで幻想郷の誰かと同調、同一化するものは割とあれど、この組み合わせは趣味からきたものでしょうか。
そうすると予想作者はtoroiya氏。

平坦で起伏が無く読みにくい文面、能力や幻想郷と言った単語を当たり前のように使うメリーらしからぬ認識で、読むのにちょっと力を使います……。
評価が厳しめになってしまったのはそこらへんに起因。長いだけに、読みにくいのは辛かった……。

特に地の文の行頭が一字下がっていないのに加え、台詞文と地の文の間に空行が無いため、どれが台詞でどれが地の文かわからなくなるのがしんどい。
携帯で見るとある程度見やすくなりましたが、Webで大窓だと……ちょっと、つらいです。
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